当ブログは YAMDAS Project の更新履歴ページです。2019年よりはてなブログに移転しました。

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はてなブックマークで振り返るYAMDAS Projectの2005年

I believe in lovers
I believe in friends
I believe in heaven here on earth
'till the, the beginning ends

Seahorses, "Love Me And Leave Me"

今年も残すところあと少しになり、2005年を回顧する文章をあちこちでみかける。

せっかくなので当方ははてなブックマークの登録数を切り口にして当サイトの2005年を振り返ってみたいと思う。はてなサービスを準拠枠にするのだから、本家サイトでなくこちらに書く。

謎の失踪を遂げる直前に祖父が言い残した「はてなブックマークなんか使ってるとバカになるよ」という言葉がひっかかって未だ自分自身は使っていないが、ネットで話題になっていることや、また特定の URL についてのはてなダイアリーでの言及を見渡すのに便利なので、そうした用途にはてなブックマークを便利に使わせてもらっている。

またはてなブックマーク自体今年の2月に始まったサービスであることを考えると、こうした切り口ができるのも今年だけである。

まあ、文章を公開した時期によりブックマークのされやすさが変わる、特にはてなダイアリーのほうは表示モードを変更した後に本格的にブックマークされるようになったとかいろいろ言い出すときりがないのだが、御託はいいとして YAMDAS Project とこの YAMDAS現更新履歴においてブックマークされた件数のトップ20は以下の通りである(2005年12月30日午前0時時点)。


1. プログラミングを独習するには10年かかる 329 users
2. 2005年は「2.0」の年だった 107 users
3. YAMDAS現更新履歴 - はてなを突き動かす天然の狂気 95 users
4. 歴史は性懲りもなく繰り返すが、何もかもが懐かしいなどとは思わない 85 users
5. YAMDAS現更新履歴 - ついカッとなってまとめてしまった。「2.0」ならなんでもよかった 76 users
6. Wiki病 - 新種の病気 63 users
7. メンテナンス可能なコードの書き方 31 users
8. ブログとWikiのベストプラクティス 30 users
9. 日本発の wiki クローンリスト 21 users
9. YAMDAS現更新履歴 - 実装はともかくとしてライブドアのWikiについての認識はまっとうだ 21 users
11. より良いCMSを作る 21 users
12. 管理職のためのハッカー FAQ 20 users
13. ポッドキャスティングを普通の人達に 16 users
13. ポジションペーパ@Wikiばな 16 users
13. FUD とは何ぞや? 16 users
13. YAMDAS現更新履歴 - AppleやGoogleの社員がブログをやらない理由についてのワタシなりの考察 16 users
17. 将棋の消費について 15 users
17. AppleやGoogleもブログをやるべき理由 15 users
19. yomoyomoの読書記録 :: 山下清美、川浦康至、川上善郎、三浦麻子『ウェブログの心理学』(NTT出版) 14 users
19. YAMDAS Project 14 users

こうやってみると自分の愛着度と関係のないリストができあがってなかなか感慨深い。はてなの現更新履歴は本家サイトよりも更新頻度が高いにも関わらずリスト入りしている数が意外に少ないとか、二つも三桁に達している文章があったのかとかいろいろ思うところはあるが、下のほうから振り返ってみたい。

個人的には読書記録から唯一ランクインしたのが『ウェブログの心理学』(asin:475710149X)に対するものだというのは意外だった。個人的には Paul Graham『ハッカーと画家 コンピュータ時代の創造者たち』ばるぼら『教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書』のほうにより心血を注いだのだが、もちろん『ウェブログの心理学』も良い本だったのは間違いない。あと当サイト的には読書記録を blosxom 上に移行したというのも大きなトピックである……他の人にはどうでもよい話だろう。

AppleやGoogleもブログをやるべき理由AppleやGoogleの社員がブログをやらない理由についてのワタシなりの考察はワンセットだが、日本でも Google を当然のように賞賛する人たちがおり、一方で日本の企業に属する技術者ももっとブログを書くべきだ、アメリカの技術者みたいに実名ブログが少ないのはまったく遅れているね的な論調も多い。そしてこの二つの主張をする人たちは相当な割合で重なっている。しかし、そうした人たちが触れないことの一つに、Google 社員でブログをやっている人が少ないことがある。ワタシはこれは不誠実だと思う。

Google は端的に言えば、Netscape 以来はじめてインターネットを通じて世界を変えた企業である。今なお文句なく優れた企業だろう。しかし一方で、Google が掲げる "Don't be evil." というスローガンは、ワタシにはもはやギャグにしか思えない。梅田望夫氏は、「最近のGoogleの在り様については色々と思うところもあるのだが(いずれ稿を改めて書く)」と今年の夏に書いているが、ワタシとしても是非それに正面から向かい合った文章を読みたいものである。

将棋の消費についてを読み直すと、将棋についての文章を書いて読者がついてきてくれるかどうかひどく気にしていること、そして一方でそのはけ口ではないが、将棋の本について結構読書記録を書いていたんだなと思う。それはともかくとして誰か来年ブロガー将棋大会とか企画しないかなぁ。はてなリング - 将棋2.0の管理者である id:catfrog さん、どうですか?

管理職のためのハッカー FAQFUD とは何ぞや?はもはや古典と言ってよいが、やはりこうしたリストを見て思うのは翻訳ものの人気である。Bram Cohen のメンテナンス可能なコードの書き方や Jeffrey Veen のより良いCMSを作るは文句なくワタシも自信をもってオススメする普遍性を持った文章だが、ブログとWikiのベストプラクティスなど Steve Rubel の文章を訳したかっただけなんだけどな。

それはともかくとして、今年も Bram Cohen や Steve Rubel 以外にも Cory Doctorow、Dave Winer、Evan Williams、Ed Felten といった錚々たる有名ブロガーの文章を翻訳できた。翻訳首狩人を自称する当方としては満足のいく年になった。何といっても今年は書籍『デジタル音楽の行方』という最高の首を狩ることができたとも言える。

しかし、ワタシとしては自分のことを翻訳者というより雑文書きだと規定しているので、歴史は性懲りもなく繰り返すが、何もかもが懐かしいなどとは思わないぐらいしか長尺の文章が書けなかったのは残念である。

あと今年の雑文書きとしての仕事という意味では、Software DesignWiki ばな連載に「yomoyomoWikiばなし」を毎回書けたというのが大きく、Wiki についてのコンテンツが複数リストに入っているのはやはり嬉しい。ただ日本発の wiki クローンリストはさすがに内容が古いので、WikiWikiWeb(ウィキウィキウェブ)リンク集などを参考にしたほうがよいと思う。

はてなブックマークでの反応に限った話ではないが、自分がよく書けたと思う文章に対する反応を少なくて/皆無で落胆することが今年も多かった。しかしその一方で、これは絶対ウケる! と公開前から確信を持つ種類のコンテンツもあった。それは例えば翻訳で言えばWiki病だし、オリジナルの文章で言えばついカッとなってまとめてしまった。「2.0」ならなんでもよかった、そしてその増補決定版の2005年は「2.0」の年だったである。後者に関しては、10月に公開してから結局今月までちょくちょく追加を繰り返したな。こういうのが一斉にブックマークされるのをみると「まとめサイト脳の恐怖」というフレーズも浮かぶが、このようなネタとベタの境目にある微妙な文章にそれを言うのも野暮というものか。

実際のところ「2005年は○○の年」と言う場合、○○には RSSポッドキャスティングが入るのではないかと思う。そうした意味でポッドキャスティングを普通の人達には良いタイミングだったと思うが、何度も書くようにワタシ自身はポッドキャスティングのカジュアル化には懐疑的である。もちろん方向性としてはそうなるに決まっているのだが、安直に質の低いポッドキャスティングが濫造され、「ポッドキャスティング=使えない」が一般的なイメージになってしまうとまずいと思うのだ。最近でははてな近藤淳也さんもポッドキャスティングにご執心なようで、その楽しさに飛びつきたくなる気持ち(これ音声でやるほうが簡単やん? 的な)はよく分かる。しかし、やはり危惧も感じる。ちょうどオライリーから翻訳が出た『Podcasting Hacks』asin:4873112664)を今読んでいるところなので、来年早々にも読書記録を書ければと思う。

さて、はてなブックマークで好ましいと思うのは、ちょっとしたきっかけで埋もれていた過去の良質なコンテンツが掘り起こされること、いや、正確に書けばその掘り起こされる様が仮想的に可視化されるところである。上で「古典」と表現した翻訳もそうだが、「発掘」といえば何といってもプログラミングを独習するには10年かかるにつきるだろう。これが圧倒的な登録数となった。ブックマークページを見ると、4月の中旬と12月末に二度ビッグウェーブが起こっている。最近のはZopeジャンキー日記のエントリが起点だと思うが、4月のは何がきっかけだったのだろう。これは今年も暮れになっての当方へのささやかなプレゼントだと思うことにする。

さて、最後に取り上げるのは、上記リストで3位に入ったはてなを突き動かす天然の狂気である。個人的に最も思い出深いエントリというのもあるし、何よりこのエントリ自体はてなブックマークの成立過程についての話を含むというのもある。

近藤淳也さんには昨年にも二度お目にかかる機会があったのだが、ワタシが極度に緊張してしまいまともな会話ができなかった。それだけにちゃんとお話をさせていただく機会が持てたこと自体が嬉しかったし、そこで聞くことのできた近藤さんの考えは、こちらの予想を遥かに越えるものだった。平たく言えば、この人は本当にヘンな人である。丸く言えば、この人の考えていることはワタシにとって驚きそのものである。

二月にはてなを来訪した目的は、翔泳社の女性社員とはてなの男性社員の合コン話を進める密使の役割を翔泳社の編集者に依頼されたためだが(ウソ)、当時は元々狭いオフィスがいっぱいいっぱいの状態だったのに絶句し、また一応お土産を持参したが川崎裕一さんと伊藤直也さん、そして近藤さん以外誰も当方に話しかけてくれず、近藤令子さんがいないと結構殺伐としているのだなと思ったことを覚えている。

それはさておき、はてなを突き動かす天然の狂気に書いた話は、近藤さんから伺って二番目に驚いた話である。一番驚いた話は、端的に言えばはてながインターネットを先に進めたいという新しいサービスへの意欲と自分たちに対する危機感の話で、伊藤直也さんもプラットフォームの志向として方向性を表現しているが、究極的には NetscapeGoogle がそうだったようにインターネットを通じて世界を変えようとする意志だとワタシは解釈した。もっと日々のサービス周り、そしてその収益性のことを考えているとばかり思っていた自分の近視眼を思い知らされた。

はてなは世界を変えるのだろうか。

馬鹿馬鹿しい。身の程知らずもいいところだ。そんなことできるわけないだろう――というのが多分妥当な答えなのだろう。

しかし、これだけは言える。自分など思いもつかないことを本気で考え行動する近藤淳也という人がワタシは好きだ。来年は難しい年になるだろうが、株式会社はてなに来年もできるだけの幸運がもたらされることを祈る。

はてな自体この一年で大きな変化を遂げた。その間、自分が以前はてなについて思っていたことが幻想に過ぎないことをいくつか思い知らされもしたが、それもよかったと思う。12月のはじめにも近藤さんらと昼食をご一緒する機会があり、そのときにはてなについての意見を求められたので、「あんな聞き取りにくいミーティング音声を公開したぐらいでオープンでヘンな会社と持て囃され、その評価に酔ってるんじゃないか」、「Google Analytics に対応したと正義面をする前に、ユーザに有料で提供しているはてなカウンタの機能向上をすべきだろう」、「はてなスタッフですら使いこなしていないように見えるはてなリングWeb 2.0 時代のウェブリングとは笑止」といった私見偏見を述べさせてもらったが、現在抱えるサービス数で考えれば、当方はもはやはてな総体についてどうこう言えるユーザではなくなっている。またそのときも当方の近視眼的な意見を改善案や新しいサービス案に即座に昇華するはてなスタッフの方々のポジティビティーには力づけられた。当方がいつまではてなを利用し続けるかは分からないが、来年もこの人たちに驚かされ続けるのは間違いなさそうだ。

あと山田さん(id:kiyohero)さんには、お会いして早々に「きよへろさん、音痴ですね!」と自分のことを棚にあげまくった暴言を吐いたことをこの場をかりてお詫びする。きよへろさんがメガネイケメンだったために「畜生、はてなにはイケメンでないと入社できないのか!」と腹が立ったためだが、このデマを書いたのが自分であるのを忘れていたのだ。

そういうわけで2005年の更新もこれで終わりである。『デジタル音楽の行方』翻訳をやりおおせたことが、やはり一番大きな成果と言える。もうやるべきことはやれたと思うし、そろそろ実家に帰らないといけないのでこれで終わりにしようと思う。それではみなさん、よいお年を。

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