梅田望夫さんによる深浦康市王位についての文章を読み、ぐっとくるものがあった。
羽生善治、佐藤康光、森内俊之のライバル関係については、すでにすべて語り尽くされている感があるが、日本中の将棋の天才少年が各地で見出され、彼らが生涯かけて「天才の中の天才は誰なのか」を決めていく棋士の世界では、どんな棋士たちの間にも、子供の頃からのドラマがあるのだ。
この文章を読んで、自分がもっとも真剣に将棋を指していた中学生の頃のことを思い出した。もう20年前になるのか……
当時ワタシは週末ごとに近くの将棋道場に通っていた。将棋大会で佐世保にも行ったっけ。その将棋大会に来られたのが林葉直子女流王将(当時)で、彼女はワタシが会ったことのある唯一のプロ棋士だというのは黒歴史的なのだが、ここでは置く。
大会の後、夜中に佐世保のとある将棋道場に世話役の方に連れられて行った覚えがあるが、あそこに深浦さんも通っていたのかしら。もっともワタシは深浦さんより二歳若く、当時既に上京していたので偶然会っていたなんてことはないだろうが。
上で梅田さんが名前を挙げるいわゆる羽生世代の名棋士たち以外にも、日本中で「天才の中の天才は誰なのか」を決める厳しい戦いが行なわれていて、深浦さんは地方出身というハンデを乗り越えその戦いを抜けたのである。
一方でワタシはその入り口のところでとてもではないが自分には見込みはないと諦めたクチだが(しかし、あれから20年たち、当時よりも多く将棋を指し、多分当時よりも強くなってるなんて夢にも思わなかったな。インターネットのおかげである)、深浦さんの話は羽生さんや佐藤さんのような早くから名人候補の天才と認められていた人たちとはまた違った意味で心をうつものがある。
プロになってまもなく、直後に悲願の名人位を獲得する米長邦雄を全日本プロ将棋トーナメントで破り優勝するなど早くからその実力を示した深浦さんにしても、羽生世代の活躍には及ばない時期が続いた。深浦さんに関して言えば、Wikipedia のページにも書かれる順位戦の不運もあった。
昨年羽生さんを破り王位を獲得した深浦さんは、今年その羽生さんのリターンマッチを受けている。升田幸三が言うように、タイトルホルダーは防衛して一人前である。深浦さんも最強の敵である羽生さんを破り王位を防衛すれば、真の意味で羽生善治と同格の敵と認められるだろう。