- 出版社/メーカー: NIKKATSU CORPORATION(NK)(D)
- 発売日: 2010/01/15
- メディア: DVD
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主人公の咳き込む音ではじまるオープニングから、まるでドキュメンタリーのようなカメラワークで撮られているが、内容的にも80年代に栄華を極めたがそれから20年経ち身体にガタがきだし、地方興行でのファイトとスーパーでの労働でなんとかトレーラーハウス暮らしを維持する落ちぶれたかつてのトップレスラーの主人公とそれを演じるミッキー・ロークを同一視せずにはおれない作りになっている。
80年代の二枚目俳優だった頃の容色はもはや見る影もないミッキー・ロークは、自らの痛々しさをさらけ出さざるをえない役柄を正面から引き受け、彼の肉体の衰え、痛みがスクリーンを通じてこちらまで伝わるくらい見事に演じきっている。
主人公は後輩たちからは未だにリスペクトされておりプロレスに向う姿勢は真摯だが(本作はプロレスの裏側までしっかり明かしてしまうからなおさらそれを感じる)、それ以外はてんでダメ人間で、糊口をしのぐ働き口も自暴自棄になって放棄し、一人娘との関係修復も果たせない。
こんな奴が不幸になろうがただの自業自得じゃないかと言われるかもしれない。そうなんだろう。しかし、あなたはそんなに利口なのか? ワタシはむしろこの主人公の隠しようもない愚かさに近いものを感じるし、その上でプロレスに殉じてしまう彼を笑うことなどできない。
お世辞にも完璧な映画とは言えない。『グラン・トリノ』のような物語性はないが、それでも本作も紛れもなく男泣きの映画だった。まさか自分がガンズの "Sweet Child o' Mine" で泣き出してしまうなんて思いもよらなかった。
あとマリサ・トメイの年齢を感じさせない肢体も良かったね。