ジェシー・アイゼンバーグといえば、なんといっても『ソーシャル・ネットワーク』だが、あれも15年前くらいの映画なんだね。
彼は『ゾンビランド』や『グランド・イリュージョン』といった娯楽作を主演して続編含めヒットを飛ばしているし、一方で『恐怖のセンセイ』といった彼らしくちょっとヘンな作品にも主演しているが、2020年代は監督作で着実に評価を確かにしている印象がある。前作は都合がつかず、見逃しちゃったけどね。
本作はキーラン・カルキンが良いという評判で、いかにも彼らしい演技を見せている。一方で主演のアイゼンバーグも、やはり彼らしい抑制的で少し神経質ないかにもな役を演じている。
ユダヤ系のいとこ同士の二人が祖母の生まれ故郷であるポーランドのツアー旅行に参加するわけだが、ロードムービーというほどスケール感はなく、キーラン・カルキン演じるベンジーは確かに衝動的でちょっとした騒動を起こすが破壊的な事態にはならず、二人以外の登場人物たちも概ね物分かりがよくて物語として破綻がない代わりに小さくまとまっており……と書いているとなんかけなしているように見えるかもしれないが、必ずしもそうではない。
特に感動的だったり劇的だったりしない、そこまで盛り上がらない中で、主人公が(客観的に見れば深刻ではない)心の痛みと向かい合う感じがリアルなのだ。
キーラン・カルキンは評判通り良くて、これはアカデミー賞助演男優賞をとるかもしれないが、個人的には主人公がそのベンジーに対する葛藤を語るレストランの場面が良かった。あと、ワタシの好きなウィル・シャープが出ているのも嬉しかったな。
90分という上映時間は最近の映画では短く感じるが、そのあたりのさくっと感は、監督としてのジェシー・アイゼンバーグの手堅さを感じたし、彼がいくつか出演しているウディ・アレンの作品から学んだのかなと勝手に思ったりした。
エンディングの(オープニングとかなり違って見える)ベンジーの表情が良かった。