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DeepSeekはリナ・カーンが正しいことを証明した?

www.dropsitenews.com

先週は、まさに DeepSeek 狂奏曲というありさまで、既にいろんな人が DeepSeek の技術やらなんやらの解説を書いているので、ここでは少し変化球な意見を紹介しておく。

「DeepSeek はリナ・カーンの正しさを証明した」とはどういうことか? リナ・カーンとは、米バイデン政権連邦取引委員会(FTC)の委員長を務めたが、トランプ政権誕生とともに予想通りお役御免となった人物である。

この文章は、かつて米国のテック企業が、連邦政府(と国防総省)の支援を受け、世界的に圧倒的な地位を築いた話から始まる。いわゆる GAFAM の話だが、その中では最初に独占的な企業となったマイクロソフトは、競合他社を排除する露骨な動きを見せたため、1998年に独占禁止法違反で合衆国政府に提訴されてしまう。

話が逸れるが、回顧録刊行を受けたビル・ゲイツの Wired でのインタビューで面白いくだりがあった。

──うーん、独占禁止法に絡む裁判での、億万長者のCEOとしてのあなたの法廷陳述を思い出しているのですが、「鼻持ちならないガキ」以外の何者でもありませんでした。

そう思ったんですか? あの弁護士のほうが鼻持ちならない奴でしたよ!

ビル・ゲイツ、自分が“手に負えない子ども”だったころについて語る | WIRED.jp

ビル・ゲイツに面と向かって、「鼻持ちならないガキ」以外の何者でもありませんでした、と言い切るスティーブン・レヴィもさすがだが、ゲイツは自らを追い詰めたデヴィッド・ボイズに今でもムカついているんだな(笑)。

閑話休題ブッシュ政権オバマ政権下でこれらのビッグテックは野放図な企業買収を行ったが、テックラッシュ運動が盛り上がり、バイデン政権下ではリナ・カーンが、オープンで公正な競争市場を維持を目指して彼らに立ちはだかった。

この文章では、ビッグテックのビジネスは、技術革新からスプレッドシートを使った錬金術に成り下がったと批判するが、DeepSeek はその詐欺を暴いたという。

OpenAIは、元々は非営利団体として始まったのに、サム・アルトマンはそれを営利企業に、そしてその名に反してクローズドに変えた。DeepSeek は、皮肉にも OpenAI の当初の使命を、市場のどのモデルよりも優れた性能を持つオープンソースモデルを提供することで果たしたとこの文章は評価する。

個人的には、オープンソース云々を含めて DeepSeek の評価は勇み足に思えるが、言いたいことは分かる。

米国政府とシリコンバレーの間で結ばれた社会契約――米国民は仕方なくその当事者となったわけだが――は単純なものだった。つまり、我々は一握りのテックブロを不可解なほどに金持ちにする引き換えに、連中がアメリカの世界的な覇権を維持するテック産業を築くというものだ。然して、テックブロどもはその契約を破った。連中は金を手にしたが、技術革新と競争を続ける代わりに、競合を排除する独占体制を築いた――我々の技術への中国のアクセスを阻止するために米国の国家安全保障の助けさえ借りて。しかし、永遠に競争から逃れることはできなかった。リナ・カーンは正しかったのだ。それが我々の現在地だ。

さて、リナ・カーンのことは、ワタシも「人工知能規制、資本主義批判、民主主義再考」などで紹介している。しかし、その中で「Wall Street Journalに「リナ・カーン委員長が裁判に勝つことはあるのだろうか」と呆れられる不甲斐ない現状」とか書いていたりする。

ことこれに関しては、Wall Street Journalネガティブキャンペーンに影響を受けたところがある。おそらくは志半ばでの退任だろうが、彼女の仕事は正しかったとワタシは強調したくて、この文章を取り上げさせてもらった。

しかし、そのリナ・カーンは、退任インタビューを Wall Street Journal で受けている。こういうところは偉いよね。

このインタビューにおける彼女の最後の発言は、"So I hope that we won't see a backsliding there." で、これは彼女の願いだろう。

ネタ元は Blood in the Machine

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