- 出版社/メーカー: 角川映画
- 発売日: 2010/12/10
- メディア: DVD
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この映画の主要登場人物である二人の女性、白人女性であるレイと先住民族のモホーツ族のライラにはいくつかの共通点がある。何より二人とも貧しく、そして未だ幼い息子がいる。そして、この物語から二人の夫は排除されており、頼ることができない。
本作はその親しくもなかった二人が、アジア人の不法移民がカナダからアメリカに密入国するのを手助けする仕事に手を染める話である。一面雪景色の中で犯罪が行われる「白のノワール」という意味ではコーエン兄弟の『ファーゴ』をちょっと思い出したが、あの映画のような俯瞰的な視点はなく、登場人物はずっと余裕がない。
このように本作に立ち込める空気はとても重いが、編集の手際がとてもよくて、100分足らずの上映時間にコンパクトにまとまっている。本作をクエンティン・タランティーノが激賞したらしいが、お前も少しはこういう手際を参考にしろよと言いたくなる。まぁ言うだけ無駄ですけど。
本作の主人公であるレイとライラ役の女優さんがいずれも生活感のある良い顔をしていて、彼女たちの側から応援するような気持ちで息を詰めてしまうのだけど、彼女たちがやっていることは紛れもない犯罪である。劇中危惧するように、もしかしたら彼女たちは自爆テロ犯人を運ぶかもしれないし、運んだ女性たちが後でどんな目にあうか想像したくもない。
それでも生きるためなら、家族を守るためならどんなことでもしなきゃならない……本当にそうなのだろうか? 閉塞感に満ちた人生にもはややり直しは叶わないのか? 主人公が最後に行う決断は、その不幸に対する問いかけがあるからこそ否定できない重みを持つ。