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カフカの遺稿出版をめぐるカフカ的状況

取り上げるのを忘れていた。

現在は世界的作家であるカフカだが、生前は無名に近い存在で、死ぬときにも親友に原稿の焼却を遺言し、本来なら作家としての彼は忘れ去られるはずだった。しかし、その親友であるマックス・ブロートがカフカの意志に反して遺稿の出版に尽力奔走し……という話は有名である。

ただマックス・ブロートの手による編集が入ったため、我々が読むカフカは元テキストとは結構違いがあるらしい、といったところまではワタシも知識として知っていたが、現実にはそこからいろんな曲折を経ながらカフカの元テキストに迫ろうとする試みが続いていたのは知らなかった。このエントリを読むだけでその大枠がつかめるように思う。

この本の著者の明星聖子さんは、ここで以前紹介した『グーテンベルクからグーグルへ』の訳者でもあったのか。なるほど、編集文献学とな。

しかしこれを読むと、旧訳を読んで分かった気になっていたカフカの小説はいったいなんだったんだという気持ちになるし、それは「カフカ的」という言葉の再定義という感じすらする。

新しいカフカ―「編集」が変えるテクスト

新しいカフカ―「編集」が変えるテクスト

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