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『別離』に震えた

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冒頭、家庭裁判所のようなところで夫婦が離婚の調停をする場面から始まるが、妻が離婚を望むのは、夫を嫌いになったからではない。夫は失業してるわけでも、DV や金銭の問題があるわけではない。海外に移住するためにずっと尽力してきたのに、いざそれが可能になると、夫が認知症の老父の介護を理由にそれに応じないからだ。

妻は現状、つまり現在のイランが娘にとって好ましくないと感じ、海外に出ようとするわけだが、もちろん妻も外国で働く意思があるのだろう。劇中、夫もできる範囲で娘の教育を見ようとする描写がいくつもあり、彼にしても妻の主張が分からないわけではないだろう。しかし、国を出る気になれない。この構図ってこれから国として落ちぶれるにつれ、日本でも出てくる話ではないかと思いながら観ていた。

妻が実家に帰ったため、夫は父親の介護をする家政婦を雇わなければならなくなる。ある日、夫と娘が帰宅してみると、老父はベッドに縛り付けられており、家政婦はいない。これに激怒した夫は、戻ってきた家政婦を怒鳴りつけ、アパートから強引に追い立てる。実は家政婦は妊娠しており、このときアパートの階段に倒れこみ、流産してしまう。

家政婦は夫を訴え、裁判が始まるのだが、果たして夫は家政婦が妊娠していたのを知っていたのか、家政婦の流産の原因は夫の行動にあるのか、というサスペンスの緊張が途切れず見事だった。

ワタシは夫役の俳優の顔が好みなこともあり(笑)、ずっと彼に肩入れして観ていたのだが、娘の存在がとても効果的に配されている。このような夫婦の揉め事の場合、娘は母親に付いていきそうなものだが、なぜ彼女は夫側にとどまったのか、これは後に妻によって語られるのだが、それを考えると娘さんは神経が張り詰めた状態だったわけで、彼女が父親の嘘を見抜くのも納得がいく。あとイランが舞台なのでイスラム教も当然ながら大きなファクターだったね。

ただの夫婦の離婚劇かと思ったら途中から良質なサスペンスとなり、裁判は、夫婦はどうなるのかと息を詰めて観たが、本作のエンディングには、ここで終わりにしてしまうのかと「うぉぉぉっっ…」と小さく叫びながら頭を抱えそうになった。

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