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アメリカでもプログラミングスクールに通ったがうまくいかなかった話があった

少し前から Twitter のタイムラインで、プログラミングスクールに通ったがうまくいかなかった話題がたまさか流れてくる印象があった。

その代表例としてあきみちさんツイートをはらせてもらったが、この話題ってどのあたりから始まったのだろうか……と少し検索してみたら、以下にその起点となる話がだいたいまとまっていた。

javablack.hatenablog.com

なんだかなぁと思ってしまう話である。誰かにそういう相談されたら、ワタシもあきみちさんのように答えると思うが、面白いと思ったのは、これとまったく同じではないが、アメリカが舞台のやはりプログラミングスクールを巡る似た問題の話を読んだことである。

onezero.medium.com

向こうでは「プログラミングスクール」より「Coding Bootcamp」という呼び名が一般的なのかな。

さて、大学で工学の学位をとったにもかかわらずサービス業しか就職できなかったジェームズ君(仮名)が技術職の求人を探していると、「初心者ソフトウェアエンジニアをもっとも多く雇用する」と謳う Revature という会社の求人が目に留まった。

Revature の求人をよく見ると、それが一般的な社員募集でなく、大学卒業生で3か月間コースのトレーニングプログラムに参加する人を募っていたのだ。Revature は応募者に住居を提供し、時給8ドルを支給する(が、家賃は差し引かれる)。トレーニングプログラムを修了したら、Revature のクライアントにプログラマとしてフルタイムで雇用してもらえる、かもしれない。

ジェームズ君には、これが望みの綱に思えた。とにかくすぐに働けるところを探していたのだ。彼は応募し、簡単な面談を経て無事合格し、Revature と契約書と取り交わした。その契約によれば、ジェームズ君はトレーニング後2年間はクライアントのために働くことを約束し、そのクライアントや勤務地を選ぶのは Revature で、2年以内に辞めた場合、36,500ドルもの違約金が発生するかもしれない。

法律の専門家によれば、こういう契約は「年季奉公(indentured servitude の訳だが江戸時代みたいだな。奴隷労働のほうが近い?)」みたいなものだという。Revature は成長しているようで、ジョージ・メイソン大学やアリゾナ州立大学などと提携している。2020年1月時点で大学卒業生の4割が失業に直面していることを考えれば、「年季奉公」でも多くの卒業生は喜んで受け入れるかもしれないのだ。

つまり、この Revature という2016年に創業した会社、半分はトレーニングプログラムの会社であり、もう半分は人材派遣会社なのである。この記事を読む限りは、人材派遣会社としての仕組みがパソナあたりを連想させるが、アメリカにおいてもプログラミングの技能を持つ大卒者は少なく、Revature のようなプログラミングスクールと人材派遣業を組み合わせた企業がトレンドらしい。

問題は、Revature との契約内容に反して離職した場合の36,500ドルという高額の「約束手形」である。そして、それだけではなく Revature との契約には、契約者を実質的に支配できる搾取の条件が組み込まれている。この会社と提携している大学がいくつもあるというのに暗澹たる気持ちになるが、大学はその重要な機能を民間の営利企業にアウトソースして、学生たちは食い物にされていると言われても仕方ないんじゃないか。

Revature(並びにそれと提携している大学)側の主張もこの文章では紹介されているが、いやはや、アコギな商売ですな。

ネタ元は Digg(って、Digg をブログのネタ元として紹介するのはおよそ10年ぶりだ!)。

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