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『メーキング・オブ・モータウン』は幸福なテックスタートアップの話みたいだった

コロナ禍と個人的な事情のアレコレで、観たい映画はいくつもあれども、なかなか映画館に足を運ぶ都合がつかない。ある時期から、家で観た新作でない映画についてはブログで取り上げなくなったのだが、本作は昨年の公開時には映画館で観れずに悔しい思いをしたけど Netflix に入ったおかげで観れて嬉しかったので例外的に取り上げたい(公式ページ)。

モータウンというと、ファンク・ブラザーズに光を当てた『永遠のモータウン』という優れたドキュメンタリー&ライブ映画が存在するが、こちらはベリー・ゴーディ社長とスモーキー・ロビンソン副社長を主な語り手として、モータウンのタレントたちも続々登場する正史に近いものである。

面白いことに映画の内容は、ベリー・ゴーディのヴィジョン、スモーキー・ザ・ポエット、会議の多い会社、ファンク・ブラザーズ、ソングライター同士の競い合い、辣腕バーニー・エイルズ、アーティスト・ディベロップメント、ロスへの移転――とピーター・バラカン『魂(ソウル)のゆくえ』モータウンの章に書いている話に極めて近い(もちろんベリー・ゴーディの搾取話はない)。

そういえば、『魂(ソウル)のゆくえ』は一昨年に新版が出ているんですね。

新版 魂(ソウル)のゆくえ

新版 魂(ソウル)のゆくえ

新版 魂のゆくえ

新版 魂のゆくえ

面白そうといろんな人たちが引き寄せられてそれぞれが才能を開花させ、激しく競争し合いながらも家族意識があり、良いサイクルが回っていくところなど、テックスタートアップの話みたいとワタシは思った。

しかし、音楽は分かりやすい。テックスタートアップのすごさを見せるのにそのサービスの画面を出したところで迫力不足だが、音楽はそれを良いタイミングで鳴らすだけでよい。しかも、本作の場合、それが綺羅星のようなモータウンのヒットチューンなのだ!

ワタシがテックスタートアップの話を連想したのは、ソングライター/プロデューサーでもあったベリー・ゴーディが、コードが書けるテックスタートアップの創業者と重なって見えたから。

70年代に入ると、各自の自己主張がモータウンの枠を超えて人が離れだし(スモーキー・ロビンソンがロスへの移転に大反対だったというのは興味深い)、特にスティーヴィー・ワンダーマーヴィン・ゲイのようにベリー・ゴーディのヴィジョンを完全に超えてしまう人も出てくる。マーヴィン・ゲイが歌うベトナム戦争や環境問題、あとドラッグ使用を歌う「クラウド9」に難色を示すゴーディに対し、創造性を発揮しろといったのはあんただろう、という感じで教え子たちに押し切られてしまう構図をテックスタートアップに置き換えてみるとどうなるだろうか。

しかし、アメリカのドキュメンタリーを見ていて感心するのは、ちゃんと古い映像を残しているところ。

本作でもデビュー前のマイケルが歌い踊る映像があるが、なんといってもスープリームスの最初のヒット曲のレコーディングで、ダイアナ・ロスが面白くなさそうにしている映像が残っているところがすごい。

あと以前からモータウンについて疑問に思っていたことがあり、これもピーター・バラカンの本で読んだ話かは思い出せないが、モータウンにはスモーキー・ロビンソン作の社歌があるという話。

この映画のエンドロールがまさにその疑問の答えになっており、出演者が一様に「オレに歌わせるなよ」「もう覚えてない」と笑い、思い出そうとした人も歌詞が出てこない中で、ベリー・ゴーディスモーキー・ロビンソンの二人だけがノリノリで歌う姿にワタシは不覚にも涙してしまった。

ゴーディが「自分が作るなら、この映画はスモーキーとオレだけだ。あとは抜きで」とはじめのほうで宣言する理由がよく分かる。

あと個人的には、ニール・ヤングさんがモータウンに所属したことのあるミュージシャンとして普通に在籍時の話を話していたのが可笑しかった。

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