およそ一年前に堀越英美さんの仕事を讃えているが、彼女が訳したアヌシェイ・フセイン『「女の痛み」はなぜ無視されるのか?』が出たばかりなのね。
晶文社の note で日本版まえがきが公開されているが、いきなり石川優実氏の名前が出てきて驚いた。キャロライン・クリアド=ペレス『存在しない女たち』とも共通するところがありそうだが、本書は医療分野という命にかかわるところでの「女の痛み」の軽視(プラス人種差別)が主眼なのが切実である。
そして、堀越英美さんは今年既にもう一冊アンナ・ラッセル『だから私はここにいる』も訳しているのに今さら気づいた。
こちらはマリー・キュリー、ヴァージニア・ウルフ、ルース・ベイダー・ギンズバーグ、アーシュラ・K・ル=グウィン、ミシェル・オバマなど新旧の世界的有名人を含む54人の女性たちのスピーチのアンソロジーである。
つまり、堀越さんは昨年に続いて今年も2冊訳書を出したことになる。しかも、昨年同様、訳した本はいずれも高度な教育性を持つ。
さらにいえば、翻訳だけでなく『エモい古語辞典』も今年出しており、そして毎月楽しく読ませてもらっている「ぼんやり者のケア・カルチャー入門」も連載中なのだから、何気に大変な仕事量である。
野中モモさんもそうだが、しっかりしたポリシーを感じる仕事をされている人には尊さを感じる。1973年組の鑑だね。