ルカ・グァダニーノの映画を観るのは、実はこれが初めて。本作の脚本のジャスティン・クリツケスは、『パスト ライブス/再会』のセリーン・ソン監督の夫であり、つまり、彼らは夫婦でそれぞれに三角関係の映画を作り、それぞれ大成功させたことになる。
本作は、ゼンデイヤ演じるタシ・ダンカンと出会った二人のテニス選手の13年間を、その二人が相まみえるニューロシェルでの小規模な大会の決勝戦、そして過去を行き来しながら描く映画だ。男二人のうち、パトリック役に見覚えがあると思ったら、Netflix の『ザ・クラウン』でチャールズ皇太子役を演じたジョシュ・オコナーだった。
ゼンデイヤの左右に男二人が座り、3P にいたる予告編を見ており、ポップなラブコメだろうと予想してたのだが、いやいや、男女の間の理不尽さをそれこそトリュフォー映画のごとく濃厚に描いている。もっとも、男二人の裸と距離の近さがフィーチャーされ、気がつくと男二人が夢中でキスをしているところがルカ・グァダニーノなのだろうが。
さて、少し前に映画にセックスシーンが登場する割合が年々減少しているという調査結果が話題になった。ワタシは基本的にこれを悪いことだと思っていない。というか、昔は安易だったり不必要なセックスシーンが多すぎたのだ。
しかし、当たり前だが人間の世界からセックスがなくなったわけではない。安易でなく映画をドライブさせるセックスをどう描くか、本作は一つの答えを出しているように思う。
本作のヒロインであるゼンデイヤは製作者にも名前を連ねており、これは彼女の主体的な選択である。文句なしにセクシーでありながら、傲慢さと腹黒さを隠さない主人公を演じているのは見事だ。
トレント・レズナーとアッティカス・ロスのコンビによる音楽が、本作の高揚の基調音になっている。こんな音楽も作れるんだな。
それにしても本作のラストは、そんな感じで終わるのか!! とゼンデイヤでなくても叫びたくなったぞ(笑)。