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イット・フォローズ

なんとも不思議なホラー映画だった。以下、内容に触れているので、未見の方はご注意を。

性交渉をすると感染するという設定は、容易にエイズや性病を連想させる。安易なセックスに対する罰の暗喩としてのホラーというのはありがちだが、どうもこれは少し違うようだ。

それに感染すると見えるようになり、ゆっくり歩いて追ってくる「それ」もゾンビを連想させるが、場合によって現れる「それ」が形を変えるあたり、そのぬぼーっとした感じが奇妙なユーモアを生んでもいるし、その正体の掴みづらさも不可思議である。

誰かに移さないと逃れられないという設定は『リング』を連想させるが、本作の場合、青春期の若者特有の不安を扱っているのは明らかである。

不思議というと、映画の年代が分かりにくい感じもある。登場人物の一人は貝殻の形をした電子書籍リーダーを使っていて、そんなもの(ワタシの知る限り)現在は存在しないので近未来の話かと思いきや、映画の中の登場人物たちがテレビで観るのは白黒映画だし、それよりも何か時間が止まったような郊外の光景、特に舞台となるデトロイトの住宅街の荒涼とした感じのほうが印象に残る。

そのようになんというかとらえどころのない不思議さのある作品世界の映画だが、長回しや360度回転など巧みなカメラワークとけたたましい電子音楽が否が応でも気分を高めるホラー映画の秀作だった。静かな、しかし怖いエンディングも良かった。

さすがに本作は観ていて謎が残ったので、久しぶりに町山智浩の映画ムダ話を買ったものかと思う。

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