この記事で紹介されている、(後の)大山康晴十五世名人と菊池寛の出合いの話は知らなかったな。
大山の回想録に出てくる菊池とのエピソードが面白い。1936年夏、奨励会2級だった大山少年は師匠の木見に命じられて、大阪を訪れていた菊池と指すことになった。駒を並べ終わったあと、菊池は左側の香を引いた。棋士の卵である大山を相手に、香落の上手で指そうというわけだ。菊池がいかに腕に自信を持っていたかがわかる。頭に来た大山少年は、容赦なく一方的に勝利を収めた。帰ってから、大山は木見に叱られることになった。
将棋界の恩人・菊池寛と1946年『将棋新聞』創刊号に掲載された「将棋随筆」(松本博文) - エキスパート - Yahoo!ニュース
奨励会員とはいえ、駒落ちの上手で指そうとする菊池寛も相当な自信だが、それをボコボコに負かす大山康晴もいかにも彼らしい。なお、大山康晴は晩年の1987年に菊池寛賞を受賞している。
そうそう、未だほとんど知られていないのでしつこく宣伝させてもらうが、ワタシは河口俊彦『大山康晴の晩節』(asin:4480431276)のちくま文庫版の解説を書いています!
それはそうと、この文章の最後でアンソロジー『将棋と文学セレクション』の刊行を知る。
将棋と文学研究会についてブログエントリを書いたのは5年以上前になり、アンソロジーを出したいと Twitter に書かれていた覚えがあるが、それが実現したわけである。これはめでたいことだ。
「近世の滝沢馬琴から戦後の澁澤龍彥にいたるまでの28人の文学者の、将棋に関する34作品を収録・解説。将棋という縦糸を用いて文学作品をつなぎ、これまでの文学史では見えてこなかった作品どうしの意外な結びつきに光を当てる」とのことで、とても興味があるテーマだし、オリジナル原稿を寄せている面々も豪華なので、注文を入れた。