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邦訳の刊行が期待される洋書を紹介しまくることにする(2012年版)

昨年のゴールデンウィーク「邦訳の刊行が期待される洋書30冊を紹介しまくることにする」を公開したのだが、その後の一年間にこのブログで紹介したものを中心に、邦訳が期待される本を再びだだだったと紹介させてもらう。今年は全部で22冊!

昨年の文章で紹介した本は少なからず邦訳が出たが、パティ・スミス回顧録など翻訳が進んでいると聞きながらまだ出ていないものもある(八田先生、『海賊のジレンマ』は……)。今回紹介する本については一応邦訳が出てないのを調べたつもりだが、その刊行(予定)についてご存知の方がいましたら教えてください。

David Weinberger 『Too Big to Know』

これはビッグデータ時代の知識のあり方を問う時宜を得た話題を扱った本だし、絶対邦訳が出るとにらんでいる。小林啓倫さんの書評も参考になる。

Too Big to Know: Rethinking Knowledge Now That the Facts Aren’t the Facts, Experts Are Everywhere, and the Smartest Person in the Room Is the Room

Too Big to Know: Rethinking Knowledge Now That the Facts Aren’t the Facts, Experts Are Everywhere, and the Smartest Person in the Room Is the Room

Christopher Hadnagy 『Social Engineering: The Art of Human Hacking』

ワタシの観測範囲が狭いだけかもしれないが、この手のセキュリティ本があんまり邦訳されなくなった印象があるので、これも難しいのかな。

Social Engineering: The Art of Human Hacking

Social Engineering: The Art of Human Hacking

Nathan Myhrvold他 『Modernist Cuisine: The Art and Science of Cooking』

えーっとですね、正直この本の邦訳はまず出ないと思います(笑)。なにせ原書からして全2400ページ、4〜5万円する圧倒的内容なので。著者と料理の関係でちょっと変わった話では、himaginaryの日記の「料理と温暖化の関係」も参考まで。

Modernist Cuisine: The Art and Science of Cooking

Modernist Cuisine: The Art and Science of Cooking

Alex Steffen 『Worldchanging, Revised Edition: A User's Guide for the 21st Century』

これも正直邦訳は厳しいかと思うが、近年『Whole Earth Catalog』がかなり再評価され、昨年の文章で「本書に関しては残念ながら邦訳は出ないだろう」と書いたスチュアート・ブランドの『Whole Earth Discipline』が『地球の論点 ―― 現実的な環境主義者のマニフェスト』(asin:4862761054)として出たことを考えると、その21世紀版の試みが消えてしまうのは惜しいように思う。

Worldchanging, Revised Edition: A User's Guide for the 21st Century

Worldchanging, Revised Edition: A User's Guide for the 21st Century

Yochai Benkler 『The Penguin and the Leviathan: How Cooperation Triumphs over Self-Interest』

ヨハイ・ベンクラーの本が翻訳されてないのって損失と思うのよね。レッシグとはまた違った意味で最近の論客に大きな影響を与えた人なわけで。

The Penguin and the Leviathan: How Cooperation Triumphs over Self-Interest

The Penguin and the Leviathan: How Cooperation Triumphs over Self-Interest

Derek Sivers 『Anything You Want』

これはページ数が少ないので、書籍として翻訳される可能性は小さいと思う。しかし、これぐらいが電子書籍で読むのに適したサイズで、おそらくそれを想定して書かれた本ではないか? この本はセス・ゴーディンが立ち上げた出版社から出ており、この推測は間違いではないと思う。こないだ文化系トークラジオ Lifeの「動員とマネタイズ」加藤貞顕さん電子書籍についてそういう分量の話を語っていたような。

ワタシはデレク・シヴァーズの文章をいくつも訳したし、折に触れ活動を取り上げてきたが、実はこの本も暇なときに3割くらいざっと訳している。ちょうど NHK「スーパープレゼンテーション」で彼の講演が取り上げられたし、もし(既に版権が取られてなくて)これの邦訳を出したいところがありましたら、お声をかけてくださるとありがたいです(笑)。

Anything You Want

Anything You Want

Terence Craig, Mary E. Ludloff 『Privacy and Big Data』

デレク・シヴァーズの本の次にこれが来るのは意図的で、これも91ページと短い、電子書籍向けの本だと思うわけである。というか、正直これもテーマ的にワタシが訳したい(笑)。

Privacy and Big Data: The Players, Regulators, and Stakeholders

Privacy and Big Data: The Players, Regulators, and Stakeholders

ケンブリュー・マクロード(Kembrew McLeod)他 『Creative License: The Law and Culture of Digital Sampling』

表現の自由vs知的財産権』みたいな本は正直もう受けないのかもしれないが、サンプリングに着目しているのは面白いと思うのだ。

Creative License: The Law and Culture of Digital Sampling

Creative License: The Law and Culture of Digital Sampling

ダグラス・クープランド(Douglas Coupland)『Marshall McLuhan: You Know Nothing of My Work!』

ダグラス・クープランドもすっかり邦訳が出ない作家になってしまったが、昨年生誕100年を迎えたマーシャル・マクルーハンの伝記ならどうだろう。この書名は映画『アニー・ホール』にカメオ出演したときの台詞から取られたものだろうが、いろいろと誤解されることの多いマクルーハンの伝記の書名としてうまいと思う。

Marshall McLuhan: You Know Nothing of My Work!

Marshall McLuhan: You Know Nothing of My Work!

ローレンス・レッシグLawrence Lessig)『Republic, Lost: How Money Corrupts Congress - and a Plan to Stop It

言わずと知れたレッシグ先生だが、「腐敗」をテーマにしてはじめての本は、アメリカの政治に密着した内容から(いつものところからは)邦訳は出ないようだ。しかし、アリアナ・ハフィントン『誰が中流を殺すのか アメリカが第三世界に堕ちる日』が出るんだから、これだって邦訳が出てもおかしくないと思うのだけど。

そうそう、レッシグ先生といえばその後『One Way Forward』という電子書籍も出している。

Republic, Lost

Republic, Lost

ブルース・シュナイアー(Bruce Schneier)『Liars and Outliers: Enabling the Trust that Society Needs to Thrive』

シュナイアー先生の新刊となれば、ワタシが心配しなくても邦訳が出るにきまっているが、『セキュリティはなぜやぶられたのか』のときみたいに時間がかからないと読者として嬉しい。

ワタシは Kindle 版を買ったままデジタル積読状態だが、書評を読む限り例によって優れた本のようだ。

Liars and Outliers: Enabling the Trust that Society Needs to Thrive

Liars and Outliers: Enabling the Trust that Society Needs to Thrive

Craig Marks, Rob Tannenbaum 『I Want My MTV: The Uncensored Story of the Music Video Revolution』

やはり80年代 PV を通して洋楽に触れた世代に属するワタシとしては是非邦訳を読みたい本なのだが、ブレット・ラトナーが映画化を手がけるそうなので、この企画が本格化すれば原作の邦訳が出る確率が上がるだろうと楽しみにしている。

I Want My MTV: The Uncensored Story of the Music Video Revolution

I Want My MTV: The Uncensored Story of the Music Video Revolution

Daniel J. Soloveのプライバシーについての書籍

この後少し読んでみて、最近やたらと幅を利かす「プライバシーなんて死んだ」的なことを得意げに言いたがる連中(でも、エリック・シュミットを例に出すまでもなく、こういう人たちに限って自分の個人情報を隠したがるし、それを公開情報から明らかにすると激怒するんだよね)に対するカウンターとして彼の本が訳されんかなと思うのだが、微妙に惜しいのは最新作 Nothing to Hide は、ソーシャルネットワーク全盛のネットを主題にした本でなく、対政府のプライバシーとセキュリティーの話が基本になっているところ。もちろん議論は応用できるところはいくらでもあるのだけど、ここは Understanding Privacy からさかのぼって邦訳を出してくれる根気のある出版社があればよいのだが、難しいだろうか……

Nothing to Hide: The False Tradeoff between Privacy and Security

Nothing to Hide: The False Tradeoff between Privacy and Security

Understanding Privacy

Understanding Privacy

Rebecca MacKinnon 『Consent of the Networked: The Worldwide Struggle For Internet Freedom』

電子フロンティア財団の2011年読書リストに入っていたし、最近ではコリィ・ドクトロウも書評を書いていたが、その筋の評価が高い本で、アジアのネット状況に詳しい論者という意味でも邦訳が出てほしい本である。

Consent of the Networked: The Worldwide Struggle For Internet Freedom

Consent of the Networked: The Worldwide Struggle For Internet Freedom

ドク・サールズ(Doc Searls)『The Intention Economy: When Customers Take Charge』

正直今更という気もするが、彼のように「私が世に知られていることは、ほとんどすべて50以降にやったことだ」という人の仕事は励みになる(ワタシもそう思うような歳になった)。

The Intention Economy: When Customers Take Charge

The Intention Economy: When Customers Take Charge

William F. Patry 『How to Fix Copyright』

この本も電子フロンティア財団の2011年読書リストに入っているが、『日本の著作権はなぜこんなに厳しいのか』(asin:4409240927)という本が書かれ、最近もダウンロード違法化が話題になった日本にとっても示唆的な内容では本ではないかと推測する。

How to Fix Copyright

How to Fix Copyright

アンドリュー・キーン(Andrew Keen)『Digital Vertigo: How Today's Online Social Revolution Is Dividing, Diminishing, and Disorienting Us』

原書は今月末に刊行されるのでまだ読めていないが、今回も読んで怒る人が続出しそうな予感。「憎まれっ子世にはばかる」的な感じで新刊も結構すぐに邦訳が出るのではないかとワタシはにらんでいる。

Digital Vertigo: How Today's Online Social Revolution Is Dividing, Diminishing, and Disorienting Us

Digital Vertigo: How Today's Online Social Revolution Is Dividing, Diminishing, and Disorienting Us

Daniel Seddiqui 『50 Jobs in 50 States: One Man's Journey of Discovery Across America』

翻訳オーディションにかけられた本だから、じきに邦訳が出ると思う。その暁には、新卒の就職が厳しい日本でもこれをまねて「47都道府県47職」とかやる若者が出てくるかもしれないが、国土の狭い日本では「50州50職」ほどの迫力はないだろうね。

50 Jobs in 50 States: One Man's Journey of Discovery across America

50 Jobs in 50 States: One Man's Journey of Discovery across America

ジェイムズ・グリック(James Gleick)『The Information: A History, a Theory, a Flood

著者はピューリッツァー賞も受賞したことがある作家で、電子フロンティア財団の2011年読書リストにも入っており、歴史書としてかなり読み応えがある本のようだ。

The Information: A History, a Theory, a Flood

The Information: A History, a Theory, a Flood

ジョージ・ダイソンGeorge Dyson)『Turing's Cathedral: The Origins of the Digital Universe

Boing Boing でコリィ・ドクトロウの書評を読み、自分のところで取り上げようと思ったら TechCrunch でインタビュー動画が公開されていたのでやめたんだっけ。

著者は著名な物理学者フリーマン・ダイソンを父親、これまた著名な起業家、ビジョナリーのエスター・ダイソンを姉に持ち、彼自身科学歴史分野で著名な作家だが、これはまさに彼が書くべき本であり、彼の代表作になるのではないか。

Turing's Cathedral: The Origins of the Digital Universe

Turing's Cathedral: The Origins of the Digital Universe

Noam Wasserman 『The Founder's Dilemmas: Anticipating and Avoiding the Pitfalls That Can Sink a Startup』

こないだ取り上げたばかりの本なので特に加えることはないが、Amazon に概略が分かるレビューが載っているので、買うかどうか考えている人はそちらを読むとよいだろう。

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