- 出版社/メーカー: キングレコード
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『ザ・ストーン・ローゼズ:メイド・オブ・ストーン』が良かったので、ブレイディみかこさんの『アナキズム・イン・ザ・UK −壊れた英国とパンク保育士奮闘記』の影響もあり、 シェーン・メドウスの代表作を借りてみた。
シェーン・メドウスはワタシとほぼ同い年だが、本作は1983年の英国を舞台にしている。本作の主人公である12歳のショーン少年は、監督の分身と考えてよいだろう。
本作は2006年に公開された映画で、1983年は随分昔の話である。しかし、本作は This was England ではなく、This is England なのだ。つまり、ノスタルジーにまったく頼ることがなく、時代性と関係なく観ることができる。
いや、もちろん時代性はある。主人公の少年は父親をフォークランド紛争でなくしたばかりだし、本作自体サッチャー政権下の郊外を、そこで特にやることなくつるむスキンヘッズの連中を描いた映画である。
スキンヘッズの仲間になることで主人公の少年は居場所を得たわけだが、その幸福な時間は、ムショから彼らの兄貴分のコンボが戻ってきたことで暗雲たちこめる。ナショナルフロント(イギリス国民戦線)に心酔し、仲間たちを分裂させるコンボは本作においては悪役なのだけど、彼が極右思想にすがってしまう背景も描かれている。彼が黒人のミルキーを部屋に招き、ソウルミュージックを聴きながら語らううちにどうしようもなく自分に欠けたものに向かいあってしまい、引き裂かれ、最終的な破綻を迎える場面は痛切である。
ストーン・ローゼズの映画を撮ったくらいの人なので、音楽の使い方がとてもよくて、その点ワタシ的には心地よかった。スミスのあの曲のカバーが流れる中、少年がセント・ジョージ・クロスを捨てる場面に、エンディングに浜辺が出てくる映画は大体名作という大雑把な仮説を思い出したりした。
本作の続編はテレビドラマになっており、1986年編、1988年編が既に作られているが、いずれも日本ではディスク化されていないのが残念である。