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ジェームス・ブラウン 最高の魂を持つ男

そりゃ JB の伝記映画と言われたら行かないわけにはいかないでしょう。

JB を演じたチャドウィック・ボーズマンのことは知らなかったが、歌にしてもステージアクションにしても実によくやっている。彼のビジネス上の庇護者にあたる役を、『ブルース・ブラザーズ』において JB のカムバックに一役買ったダン・エイクロイドが演じているのもよかったな。

映画はかのカーチェース事件の前段にあたる、殿ご乱心な場面から始まるが、そこから彼の子供時代にさかのぼり、以後時代を行き来しながら彼の人生を辿る形式である。

彼の自伝を読むなどしていると、時系列など史実とかなり違ったところがあるのが分かるのだが、それに目くじらを立てるつもりはない。家族の話よりもっと掘れるところがあるだろうが! という不満はあるが、それを引き受けていたら、楽勝で上映時間が3時間超えになってしまうのだろうな。

本作はジェームス・ブラウンという、およそ民主主義の世界には折り合いがつかない傑出した人物の闘いの人生を描くものだが、生来のカリスマでバンドを統率し、すべてを打楽器にしてしまうプロデュース能力を発揮する……も罰金を容赦なく課す暴君ぶりもちゃんと描き、単なる音楽バカでなく商才も発揮する……が、ビジネスを広げすぎて手に負えなくなりバンドメンバーのギャラすら未払いになりバンドからストライキを宣告されるマヌケさもちゃんと描き、しかし、そこでバンドをクビにしてブーツィー・コリンズら若手を入れたメンツで1971年のパリ公演を成功させるところを音楽的なクライマックスにするところは、彼のアルバムの中で『ライヴ・イン・パリ ‘71』が一番好きなワタシ的には最高だった……のだが、その直後に盟友ボビー・バードの離反を描く、というようにアップダウンの演出がなされている。

そして、70年代から80年代を大方すっ飛ばして(これはちょっとどうよ)例の1988年のカーチェース事件に戻るという豪快な展開である。収監された後についてもうちょっと掘れれば『レイジング・ブル』みたいな感じになってよかったんじゃないかとも思ったが、話は1993年(ワタシが JB の来日公演を唯一大阪で見れた年である)まで飛んで、JB の才能とカリスマの一番の理解者であり、彼を支え続けたボビー・バードとの友情物語で締めるという、JB の伝記映画らしい強引さであった。

あと彼の人生を描くなら、もっと同時代の音楽業界の著名人も出せたのだろうが、それをやると冗漫になると判断したか最小限である。しかし、リトル・リチャードの台詞がすべておねえ言葉の字幕になっていて笑ってしまった。

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