『コブラ会』はシーズン4までとても楽しく見せてもらったが、先ごろ Netflix で配信されたシーズン5はもういいかなとパスする予定。
『コブラ会』は映画『ベスト・キッド』で敵役で敗者だったジョニー・ロレンスが主人公のドラマだが、『ベスト・キッド』で主人公ダニエル・ラルーソーを演じたラルフ・マッチオにとっても復活作となった。
そのラルフ・マッチオが回顧録 Waxing On を出している。
映画『ベスト・キッド』を観た人なら、この「ワックスがけ」というタイトル自体がそれに由来することが分かるのだが、「The Karate Kid and Me」という副題も、吹っ切れ具合が伝わる。
ラルフ・マッチオも『ベスト・キッド』で一躍スターになり、映画『クロスロード』で主演を張り、ブロードウェイの舞台ではロバート・デ・ニーロと共演するなど好調だったが、当たり役の『ベスト・キッド』の続編をこなすうちにキャリアも下降線というアイドル俳優のよくあるパターンを辿ってしまう。
逃した好機もあり、巨匠シドニー・ルメットの『旅立ちの時』で「重要な役」をやれるチャンスがあったのに、撮影時期が『ベスト・キッド』の三作目と重なってしまい、役を逃したのには大きなフラストレーションを感じたようだ(『旅立ちの時』で主役を演じたリヴァー・フェニックスが、アカデミー助演男優賞にノミネートされたのでなおさら。余談だが、この『旅立ちの時』、偶然にも今夜 BS プレミアムで放送されます)。
90年代には二人の子供に恵まれ、充実した家庭生活を送るも、特筆すべきは『いとこのビニー』くらいで、だんだんと俳優としては忘れられた存在になってしまう。マッチオはその低迷期も自分自身をクリエイティブに充実させ、成長し続けたと語っており、その前向きな姿勢は偉いよね。ワタシだったら、絶対ドラッグにはまってるよ。
そして、『コブラ会』で(ジョニー・ロレンス役のウィリアム・ザブカともども)復活を遂げるわけだが、疎ましくも思った時期もあったろう『ベスト・キッド』のダニエル・ラルーソーこそが自分にとっての当たり役なのだと明るく受け入れ、還暦を迎えている。いい話じゃん。