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ローレンス・レッシグはAIが作成した作品に著作権を認めるべきという立場みたい

medium.lessig.org

ローレンス・レッシグ先生が、AI 技術が生み出した作品に著作権が認められるべきかについて論じている。

ご存じの通り、米著作権局によるガイドラインによれば、AI が自動生成したものには著作権はないが、アーティストが十分にクリエイティブなプロンプトを与えるなら著作権が認められる可能性があることを示唆している。が、現時点では申請された案件すべてについて著作権を却下している。

これについてレッシグは、「この結論は単に間違っているだけでなく、戦略的に間違っている」と断じる。創造的な作品を生み出す機械の使用者に著作権が認められるべきでない理由は現行法のもとでは存在しないというのだ。うーむ、そうなのか?

AI の創造性を形にする機械を操作するのは人間であり、その多くがアーティストなのを見逃してはいけないという。カメラで風景写真を撮影する際、カメラという機械が人間の創造を助けているが、その撮影者が著作権を有することになる。それに多大な努力とか創造性とか法律上要求されることはない。

Dall-E を使った場合でも、それは変わらないはずだとレッシグは書く。確かにこの場合、AI の力が大きいわけだが、風景を撮影した写真だって簡単にできるし、前述の通り、努力や苦労が著作権の条件にはならない。

著作権局は、十分に創造的な、あるいは複雑なプロンプトがあれば著作権の対象になるかもという立場だが、これは間違っているとレッシグは書く。多くの弁護士が必要となるそうした複雑さは著作権には必要ではなく、必要なのはクリエイターが自らの創造性を守るのに頼れるシンプルな体制だという。

AI 生成作品の著作権を否定することが、人間の創造性に利益をもたらすという考えも間違いだとレッシグは書く。それはアメリカの建国当時に、外国人作家に著作権保護を認めなかったようなものであり、それはアメリカ人に害を及ぼした。

著作権局は、AI 生成の創作物の氾濫とそれがクリエイターを脅かすのを恐れているわけだが、議会が著作権制度に、AI による著作権保護と引き換えに AI 技術に作品の出自と所有権を立証するデータを結びつけ、作品の登録を要求する(国内作品のみを対象とする)一連の手続き(formalities)を再導入すれば、こうした懸念は払拭されると論じる。そうすれば、著作物の所有者を簡単に特定でき、作品が再利用される際に権利を簡単にクリアできるようになるという。

レッシグが AI の創造性に著作権を認める考えなのに驚かれる人もいるだろうが、彼は作品を自由にライセンスできるようにする Creative Commons の共同設立者であり、その立場からすれば AI との人間の競争だって認めないわけにはいかないという立場のようだ。

レッシグの意見には賛否あるだろうし、ワタシ自身、「作品の登録」がそんなにうまく機能するか疑問だったりする。ただ、あっという間にデジタル創作物の大半は、人間が引き金をひいて AI に生成されたものになるだろうという見立ては間違っていないだろう。彼が例に出すデジカメで撮ったものに著作権が認められるのが当然なように、これからは人間の創作の過程に AI が介在するのが当たり前になるのだから、著作権のシステムはその所有権を特定できる技術を備える必要があり、AI の創造性はそうしたレジストリを構築する好機を与えてくれたと考えるべきというレッシグの考えは分かるように思う。

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