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我々には新たなインターネットが必要なのか?

www.fierce-network.com

Pluralistic で知った「我々には新たなインターネットが必要」という論説だが、四部構成になっている。

まず最初はメタバース。Meta のメタバース構想については、ワタシも2年近く前に取り上げているが、まぁ、案の定、マーク・ザッカーバーグの期待通りに事は進まなかった。

当時メタバース本がいろいろ出たが、その代表格である『ザ・メタバース 世界を創り変えしもの』(asin:4864109281)の著者のマシュー・ボールは、その The Metaverse の完全改訂更新版を出したばかりである。

マシュー・ボールは、メタバース、すなわち「空間インターネット(spatial Internet)」こそがインターネットの未来だと主張している。3D なインターネットということですね。この夏日本でも発売された Apple Vision Pro がどれくらい成功するかがポイントでしょうか。

続いて紹介されるのは、SF 作家のカール・シュレイダー(彼の作品で邦訳があるのは『太陽の中の太陽』(asin:4150116903)だけかな?)の After the Internet という文章である。

この文章で論じられるのは、「オンライン世界」という概念は、それこそウィリアム・ギブスンの『ニューロマンサー』やニール・スティーヴンソンの『スノウ・クラッシュ』によって作られた、オフラインの法律や行動規則が適用されない場所という「欠陥のある比喩」という話である。

サイバースペース」という時代遅れの概念から離れ、インターネットを「場所」としてとらえるのではなく、我々の日常生活で現実の交流に焦点をあてた新しいコンセプトを追求すべきとシュレイダーは書く。

続けてシュレイダーが論じるチリの「サイバーシン」についてはワタシは知識がないので端折らせてもらうが、そういうオルタナティブの可能性もあったということだろう。

そして次は、マシュー・ボールとカール・シュレイダーの論を踏まえたうえでこの文章の著者が挙げる深刻な問題である。それは今日のインターネットの基礎となるデータネットワークが、目的に適合していないという話である。

彼が挙げるのは xkcd の有名な画で、八田真行が「ネブラスカ問題」と呼ぶ、我々が当たり前のように依存しているインフラは実はものすごく脆弱かもという話ですね。著者は、最近の CrowdStrike による Windows マシンの障害をその実例として挙げる。CrowdStrike は、いつの間にかインターネットの単一障害点(SPOF)になっていたのだ。

そして最後に著者は、この文章が掲載されている Fierce Network が手がける「スマートクラウド」が必要なんですよという売り込みの話になる。

「スマートクラウド」はともかく、我々に新たなインターネットが必要なのはそうだろうと思うのだが、正しいコンセプトに基づく信頼できるグローバルネットワークをこれから新たに作り上げられるかというと……うーん。

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