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レッド・ツェッペリン DVD

DVDジャケット

なぜ今頃? と言われそうだが、発売直後に購入したこの DVD をようやく全部見終えたのだ。ずっと見よう見ようと思いながら、通して見るのを先送りにしていたのである。

奇妙に聞こえるだろうが、ツェッペリンが自分にとってとても大きな存在なので、その貴重なライブ映像となると、こちらもそれなりの準備(何の?)をして観なければならないと構えてしまうところがあったようだ。正直、DVD でなく CD の方を買っていればよかったと何度か思った。

ライブは年代順に並んでいるが、個人的にはディスク2のほうが盛り上がった。やはりねぇ、「幻惑されて」は、21世紀の時間感覚には合わんよ(と時代のせいにする)。それはともかく、メンバー4人が皆精悍で美しいのが素晴らしい。その後の残骸状態を知る者としては、ロバート・プラントをはじめとして神々しくさえある彼らの立ち姿を見れて本当によかった。

例えば DVD 二枚目の一曲目「移民の歌」のエネルギーはどうよ。『BBC Sessions』でもこの曲の演奏には度肝を抜かれたが、やっぱりライブにおけるボンゾ(ジョン・ボーナム)のドラムのテンションは異常だ。アールズコートでの「天国への階段」で、プラントがクライマックス部分を一オクターブ下げて歌ってるのもこれに免じて許してやろう(偉そうに)。

しかし、個人的に一番興味深かったのは、1979年のネブワースにおける「アキレス最後の戦い」である。

この頃にはジミー・ペイジは、「できるかな」のノッポさん化が進行しており少しヨレた感じで、一方で翌年死んじまうようにはとても見えないボンゾのパワフルなドラムがペイジをいたぶっているように見えて笑えるのだが、重要なのはそこではない。

「アキレス最後の戦い」は、ツェッペリン後期の代表曲と言われる。まあ、実際その通りなのだけど、楽曲自体もさることながらプロダクションがかなりヘンなのだ。ツェッペリンのバンドサウンドのイビツさについては、おれカネゴンさんの評言を引用させてもらおう。

Led Zeppelinの困ったところは「コピーしてもキマらない」こと。(中略)その原因は、異常なぐらいメンバー4人のノリ(groove)が違うことにあるとカネゴン一方的に決めつけている。ノリに関する認識がここまで違っていたら、普通は音楽として成立しない。(中略)ポイントは「ギターは全然違うことを考えながら演奏する」「ドラムは絶対他のメンバーに合わせない」「ベースはまったく主張しない」「ボーカルはバックの音を聞かない」こと。これをうまい人達がやってしまっているところが肝心。

「アキレス」の場合、ボンゾのドラムが直情的に突っ走り、それにペイジが一世一代のギターワークでガチに応酬し、一方でプラントは太鼓とギターリフのバトルとまったく別方向に朗々と歌いあげるという「カシミール」あたりで顕著になった、音響的にバランスが悪く、情緒的な観点でいえば不健康な、しかしバンドの音がひと塊となってハンマーのように聞き手に振り下ろされるという後期ツェッペリンのプロダクションの集大成なわけだが、ネブワースのライブ映像を見ると、ボンゾの圧倒的なドラムに右に左に振り回されるノッポさんの横で歌うプラントが力強いのだ。紛れもなく楽曲の中心に立っている。

ロバート・プラントが優れたボーカリストだということは分かりきった話なはずなのだが、90年代以降のツェッペリンの評価がボンゾのドラムとペイジのリフに集中していただけに、自分が一番好きだったメンバーがパーシーであることを思い出させてくれてよかった。

しかしなぁ、インタビューにはちゃんと字幕を付けてよ。

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