はてな合宿の成果物としてはてなアイデアやはてなブックマークに機能拡張が行われた。それでもまだ近々リリースのものが残っているというのだから恐ろしい人たちである。
梅田望夫はてな取締役は、社員のはてなダイアリーにおいて続々と合宿(の成果)のレポートがなされるのを見て、
こういう重要な内部事情をどんどん外に向けてオープンにしていく発想が、はてなのユニークネスの中で最も不思議なところである。これは容易に真似できることではない。ある種の狂気と言ってもいい。
と「何でもオープンにすることについて」に書いているが、本当にこれは狂気の域だ。もっとも「天才の狂気」といった言葉につきものの悲愴さを感じさせない。ワタシはこれを「はてなの天然の狂気」と呼びたい。
はてなという会社はワタシにとって悪くも良くも驚きであり、近藤淳也社長に(一回目の)はてな合宿について話を伺い、心底驚かされたことがある。さすがにこの話は書いてはまずいだろうと遠慮していたのだが、伊藤直也はてな CTO は「隠さなくていいものは隠したってしょうがない」、川崎裕一副社長も「情報を隠す意味は「あまり」ない」と書かれているくらいで自主規制して損した(笑)。ワタシもどさくさに紛れて書いておこう。以下の話は当方の聞き間違い、記憶違いがあるかもしれず、内容の正確さは保証できません。
一回目のはてな合宿の成果がはてなブックマークであることはご存知の通りである。ワタシはてっきりはてなブックマークの仕上げのため、開発に専念できる環境がほしくて合宿を行ったのだろうと思っていたのだが、近藤さんによるとそうではないとのこと。
何を作るか確たるアテがないまま、近藤さんが合宿をやりたい! やるぞ! と半ば強引に宣言して場所の予約をしたというのだ。そして、行きの車中で「うーん、何やろか」と議論して「ブックマークやろか」となり、そして合宿中にはてなブックマークを一から実装したというのある。
これを聞いてワタシは驚き、呆れ、慄いた。もちろんはてなブックマークが日本で最初のソーシャルブックマークシステムではない(ishinao さん作の MM/Memo がある)にしろ、この衝動性と自分達への自信は尋常ではない。合宿をやって、何も新しいものが生まれないなんて考えもしなかったのだ、この人たちは!
はてなを突き動かしているのが、近藤さんをはじめとする社員の天然の狂気であることをワタシはそのとき悟ったのである。
さて、そのときワタシは、はてなのサービスにはヘルプドキュメントをはじめとして、初心者をすくいあげる「言葉」が足らないと偉そうにも述べさせてもらった。
例えばはてなブックマークについて言えば、「ソーシャルブックマーク」というギーク向けの標語を投げ出したままで、はじめてはてなのサービスを使う一般ユーザが試してみようかと思うようなハードルを下げる「言葉」が足らないじゃないかと言いたかったわけである。
この件についてはまた別の機会に書かせてもらうし、これに関連してワタシは以前「「ブログ2.0」の隆盛と「はてな2.0」の不安」という文章で、
HotWired のインタビューで、「僕たちが運営者でありながら、ヘビーユーザーである」と近藤社長は述べているが、当たり前だがそれはパワーユーザたる自分達の利便性を第一に優先してよいという理由にはならない。何かとあればユーザ数十数万人と数字を挙げるが、それだけの人間が日々利用する道具の意味を実は見失っているのではないか。
と吐き捨てている。しかし、ワタシは大きな要素を過小評価していたことを思い知らされる。はてなのユーザだ。
はてなブックマークが特にそうだが、「はてなブックマークは○○だ」みたいなキャッチフレーズをいくつも考え出し、こうも使えるああも使える、コメント欄はこうだ、カラーギャングだとユーザが言葉をどんどん補う。「参加の設計」や「ユーザー中心の開発」といったことを言う人は多いが、サービス提供者とユーザのこの関係性は一体何なんだと思う。近藤さんが「人文系オープンソース」という言葉を使ったとき、ここまで想定の範囲内だったとしたら本当にとんでもない設計者である。
今回のはてなアイデアの株式市場化についても、モーリさんは「テキストエフェクト」という新技術(笑)を使ってヤケクソ気味に「あんたたちは個人サイトですか?」と誉めているが、もちろんこれははてなの狂気を了解している人の意見であって、たとえそうでも bmp さんのような感想を予想できてなかったなら、明らかにはてなは道を踏み外している。
説明が足りない。ルールがわからない。意味が分からない。 意図が分からない。どう楽しめばいいのか、分からない。 それが楽しめるのかも謎だし。 何がどう効率がよくなるのかまったく理解が出来ない そんなものを何故ユーザーは率先して使わねばならぬのか それについても、どうかきちんとした説明をして欲しい
これを織り込み済みで走ったのなら上等だが、自分達の利便性を優先して突っ走っても必ずユーザが面白がってくれると思ったら大間違いだとは言っておきたい。
ただ今回もすかさず「はてなアイデア資産運用メモ」というありがたい文章を書く人が出てくるし、また実装者である近藤さんの動きも早く、早々にはてなアイデアのヘルプを大幅に充実したのは評価すべきだし、開発の意図や背景について「予測市場で要望を吸い上げる」という文章を書いている。この文章は続くようなので楽しみである。
これからもはてなには驚かされ続けるに違いない。
[6月15日追記]:一応補足を書いておきました。