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ジョエル・スポルスキーの「ダクトテーププログラマ」というjwz評が論議に

こないだ紹介した『Coders at Work』だが、これを読んだ Joel Spolsky が、早速 The Duct Tape Programmer というエントリーを書いている。

Joel Spolsky は、一番目にインタビューされている Jamie Zawinski(通称 jwz)を「ダクトテーププログラマ」と評している。ここで「ダクトテーププログラマ」とは、乱暴に要約すると、彼のもう一つの造語である「アーキテクチャ宇宙飛行士」の対極にいるような、プラグマティックに力技で問題をずんずん乗り越えていくプログラマを指している。

ただそれが、本物のプログラマC++ のテンプレートや多重継承なんかには頼らないもんだと読まれてしまい(これも乱暴な要約ね)、Hacker News(Shiro さんもコメントしてる)といったおなじみのところや Tim BrayJeremy Zawodny などの大物まで反応することとなった。

その反響を受け、『Coders at Work』の著者である Peter Seibel が二点コメントしている。

まず Jamie Zawinski が語っているのは1994年の話であり、現在の C++ テンプレートではないこと。そして、その1994年に Netscapeプログラマたちは(自ら望んだものとはいえ)ものすごいプレッシャーの元にあったこと。

プレッシャーとは、とにかく半年で Netscape Navigator を作り上げないといけないという締め切りの意識である。何故半年なのか? この半年で自分たち以外の誰かがブラウザを作って自分たちを打ち負かしてしまうと考えたからだ。

後に jwz は Mozilla から身をひくとき以下のように書いているが、それがプレッシャーに打ち勝った自負によるものなのは間違いない。

ぼくたちがこの会社を始めたとき、世界を変えてやるつもりだった。そして、ぼくたちは変えてみせた。ぼくたちがやらなくても、その変化は多分、6 ヶ月だか 1 年だかたてば起こっただろう。だれがそれをどういうふうにやったかは知るよしもないけれど。でも、それを実際にやったのはぼくたちだった。

Peter Seibel は注意点も忘れてない。Netscape は力技に頼りすぎたために後に上述の Mozilla で全面的にレイアウトエンジンを書き直すことになったのではないか?

そうした代償については jwz も認めているが、もう一つ注意しなければならないのは、ブラウザのコードの全面的な書き直しは Mozilla のときが二度目だったということ。Netscape ブラウザはバージョン3.0から4.0になるとき、当時買収した Collabra という企業のせいで、一度全面的に書き直され(ダメにさせられ)ているというのだ。

そのあたりについては、jwz が「グループウェア、ダメ!」で苦々しく書いていることと符合する。

また jwz 本人も Joel Spolsky の文章を受け、that "duct tape" silliness(あの「ダクトテープ」のたわごと)というエントリを書いている。

なんかすごくヘンな文章で、大体俺の見解に好意的なんだけど、ものすごい勢いで驚いていて、まるで奴が本物のユニコーンか何かを見つけたみたいでさ。「みんな、見てみろ! これが本当に物事をやり遂げたハッカーだが、彼は私や友人全員が生計を立てるのに使っている最新の流行に見向きもしないぞ」まるで彼には僕みたいな人間が存在するのが想像すらできない感じなんだ。奴は感銘を受けてるみたいにみえるけど、自分が発見したこの神話上の生き物が信じらんないんだ。もちろん「ダクトテープ」云々はなんとなくバカにしているし、これこそいわゆる「褒め殺し」ってやつの完璧な例じゃないか。

この後 Peter Seibel が指摘しているポイントの話になるのだが、さすが jwz というべきか、Joel Spolsky なんか屁でもねーぜという感じがいかにも彼らしい。

そういえば jwz といえば「Palmの救世主、おへそを曲げた開発者をTwitterで説得」というヘンなブログ記事があって、これを書いている佐藤由紀子は、記事中の jwz という人が何者か分かってないのではないか? いや、ちゃんと分かってるという反論が本人からあれば謝罪して訂正するが、Jamie Zawinski が何者か知らないで「海外記事」担当とはどうなんだろう。万が一予備知識がなくても彼のブログからリンクをちょっと辿れば、彼がどういう仕事をしてきたかすぐに分かるはずなのに、記者として恥ずかしくないのだろうか。しかも jwz の人となりやキャリアを踏まえれば、この記事のやりとりの面白みは変わるのに。

ITmedia はどうでもいいとして、まずは『Coders at Work』を読まないことには判断できないということで、この本を読むことを勧めている点では Joel Spolsky、Peter Seibel、そして Jamie Zawinski の三者は完全に合意している(笑)

青木靖さん、Joel の記事翻訳なさいません? どうせなら『Coders at Work』もやってみません?

Coders at Work: Reflections on the Craft of Programming

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