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25年目の弦楽四重奏

今年はフィリップ・シーモア・ホフマン『ザ・マスター』クリストファー・ウォーケン『Stand Up Guys』に続いて大きな役をやる映画を観れて嬉しい(公式サイト)。

本作は邦題通り25年目を迎えた弦楽四重奏団「フーガ」が、ウォーケン演じるチェリストが、パーキンソン病の発病を理由に引退を宣言し、またシーマン演じる第二ヴァイオリニストが第一を弾くことを望み、それがキャサリン・キーナー演じるヴィオラ奏者との夫婦にも亀裂を生み、それに夫妻の娘であるヴァイオリニストも絡む人間模様の映画である。

ワタシはこういう映画が好きなのだなぁ。地味だけど。それはつまりウォーケン様やシーマンが出ている映画という意味でもあるのだが、時間の流れと重みで人間関係を熟考させる映画で、本作ではキャサリン・キーナーが特によかった。

この人を認識したのは『マルコヴィッチの穴』からだが、この映画では奏者・母親・妻という三つの顔を持つ役をよく演じていて、本作は偶然にも今何かと言われる、働く女性にとっての妊娠と子育てという話題にも焦点があたる。

人間には役割というものがある。第一ヴァイオリニストと第二は演者としての優劣ではなく、役割が違うだけなのだ。そう説明しながらどうしてもそれに納得できないシーマンは、自分にとっての人生の役割に自信が持てない中年男性の姿でもある。

ウォーケンも『Stand Up Guys』よりさらに静謐な演技をみせ、映画を引き締めている。彼の引退とともに弦楽四重奏団はバラバラになってしまうのか、最後の演奏シーン、そして一波乱あった後に第一ヴァイオリニスト演じるマーク・イヴァニールが見せるちょっとした所作、それを見た残りの三人もそれに続き、また演奏に入るエンディングは地味だがぐっとくるものがあった。

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