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Steely Dan, Aja

Aja

Aja

調べものをしていたら、スティーリー・ダンの最高傑作が600円台で売られているのに気付き、慌てて「Amazon980円劇場」として紹介させてもらう。

ご存知の通り、本作はスティーリー・ダンの最高傑作とされる。実際その通りなのだが(ワタシ自身はこの次の『Gaucho』も同じくらい好き)、このアルバム自体は(主に)ニューヨークの一流セッションミュージシャンを贅沢に配した非常に高級な作品である。正直に書くが、高校時代いきがっていきなり本作からスティーリー・ダンに入門したものの、とてもじゃないが当時はアルバムを咀嚼できませんでしたね。

ドナルド・フェイゲンウォルター・ベッカーがやりたい音って結局ジャズファンクだと思うのだけど、本作がハイブロウながらポップミュージックとして流通できたのは、逆説的だが初期の西海岸バンド時代って大きかったんだなと思ったりする。

あと彼らの魅力の一つに捻りのある歌詞があり、当時から「ポエティック・ロック」とか言われたが、ぶっちゃけその何割かは、バンド名がバロウズの小説内のフレーズから取られたという予備知識と、当時の訳詞が純然たる誤訳からなっていたため意味不明で、雰囲気を感じるしかなかったのがあると思う。

もっとも当時の訳詞者を責めるつもりはない。The Steely Dan Dictionary というのがあるくらいで、インターネット時代以前にニューヨーカー的語彙がない人に彼らの詞を訳すのは端的にいって無理だったのだ。

ワタシが高校時代に買った CD についていた訳詞も、"Deacon Blues" のサビの部分における「アラバマの赤い潮」という伝説的な誤訳は有名だが(正解は、アラバマ大学のアメフトチームのニックネームが "Crimson Tide" だったことを指している)、冒頭の "Black Cow" も「牛の乳を飲んで出発しようぜ」みたいな都会的な彼らの音にまったく似合わないカントリーな訳詞になっていたのも懐かしい(正解は、"Black Cow" はソーダの名前)。

これは確かデニー・ディアスが言っていたことだが、フェイゲンとベッカーは、一流のセッションミュージシャンを呼び、まず完璧に正確に曲を演奏させる。しかし、それで終わりでなく、今度は自然に演奏できるところまで持っていき、そこで初めて録音に入るそうだ。本作は未だに「良い音」の見本とされるロジャー・ニコルズのエンジニアリングから山口小夜子を配したジャケットまでとにかく高級なアルバムだが、居丈高であったり威圧的でないのは、その自然さがあるからである。

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