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速水健朗さんのポッドキャスト再開、そしてマウンティングから老人介護まで

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速水健朗さんがポッドキャストを「すべてのニュースは賞味期限切れである」あらため「これはニュースではない」という小西康陽リスペクトな名前でリニューアルしている。ワオ!

再開1回目はクエストラブ『ミュージック・イズ・ヒストリー』の話だが、ワタシなど「19歳の女の子に~」というタイトルを見ただけで、スティーリー・ダンの "Hey Nineteen" のことだ! と嬉しくなってしまった。

少し前に東京大学学位記授与式の総長告辞でドナルド・フェイゲンの歌詞が引用されてなによりワタシが歓喜した話を書いたが、これまたドナルド・フェイゲンつながりですね!(強引)

"Hey Nineteen" はスティーリー・ダンの(再結成前の)ラストアルバム『Gaucho』収録のヒット曲である。スティーリー・ダンの最高傑作といえば『Aja』になるのだけど、ワタシは洗練の極みである『Gaucho』も大好きである。

さて、"Hey Nineteen" が「19歳の女の子に「アレサ・フランクリンも知らないの?」とマウンティング」している曲というのは本当なのだけど、この曲は冒頭から「いやさ、(自分が19歳だった)1967年頃は俺もイケメンでブイブイいわせてたわけよ」といきなりウザい。

つまり、19歳の女の子に「アレサ・フランクリンも知らないの?」とマウンティングするこの曲の語り手のイタさは意図的で、当時アラサーだったドナルド・フェイゲンが、10歳くらい若い女の子相手じゃダンスも踊れないし、話も全然かみ合わないけど、クエルボ・ゴールドのテキーラとコロンビア産のマリファナの力を借りて楽しもうぜというイタい語り手を演じているんですね。

ただね、言うてもアラサーの語り手が10歳違いの女の子を誘う歌は当時は全然アリだったろうし、現在でも極端に不道徳とまでは言えないだろう(女の子に酒やマリファナを強いなければ)。

しかし、"Hey Nineteen" は現在までスティーリー・ダンのライブで必ず演奏される代表曲である。リリースから40年以上経った、70歳を過ぎたフェイゲンが19歳の女の子に呼びかける歌は、当時とはまったく違った問題が出てくるのだが――というか、まさか当人もそんな長く現役を続けるなんて、曲書いてる当時は思いもしなかったろうし!

それで思い出すのは、フェイゲンの『ヒップの極意 EMINENT HIPSTERS』に収録された、マイケル・マクドナルドボズ・スキャッグスと組んだ「デュークス・オブ・セプテンバー」としての2012年のツアーを記録したツアーダイアリーにおける6月27日の以下のくだりである。

 問題はスティーリー・ダンでツアーしていても、最近は会場が縮小しているように思えることだ。むろん、今のわたしは本音を隠している。マイク、ボズ、わたしはいずれもかなりの年寄りだし、観客の大半もそうだ。それにしても今夜の客層は老いぼれて見え、わたしは思わずビンゴの番号を発表したくなった。にもかかわらずライブの終盤には、よたよたしつつも全員が立ち上がり、マイクのうたうバディ・マイルズの<ゼム・チェンジス>に合わせて、精いっぱいロックしていた。というわけでこれが今のわたしの仕事だ――老人介護。(p.162)

いかにもドナルド・フェイゲンらしい皮肉さ全開の書きぶりだが(ビンゴのくだりは、ドラマ『ベター・コール・ソウル』の老人ホームの場面を思い出そう)、それからも10年経つと少々シャレにならないところもある。最近はワタシ自身歳を取ったせいか、この「老人介護としてのロック」について考えることがよくあり、それについてはまた別の機会に書くかもしれない。

おっと、ポッドキャストの話から話が逸れまくったが、速水さん、楽しみにしてますよ!

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