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「VHS対共産主義」で思い出したポーランドの破壊的な映画吹き替えの話

ドキュメンタリー映画 Chuck Norris vs Communism からの抜粋からなる記事については日本語訳が公開されているが、是非上のページで動画をみてほしい(平易な英語字幕付きなのでまず理解できます)。

要はチャウシェスク政権の圧政下にあった1980年代のルーマニアにおいて、密かにアメリカ映画の VHS テープのコピーが流通していたのだが、それらすべての吹き替えを行っていた女性についての記事である。

その声の主 Irina Margareta Nistor さんがその秘密活動に手を染めた理由に「映画が観れたからよ! それで私は世界とつながりを保っていられる」と語るところ、当時彼女の吹き替えを聞いていたルーマニアの人が「彼女がどんな人とか想像もできなかった」「彼女は「声」そのものだったんだ」と語るところなど胸が熱くなった。

吹き替えされたのはチャック・ノリスなどのアクション映画が多かったようだが、動画の中で一瞬映画『タクシードライバー』のかの有名な "You talkin' to me?" の場面が映るのだが、画面のデ・ニーロに甲高い女性の声の吹き替えが入るのはなかなかシュールだった。

それを見て、ワタシは数年前ポーランドに行ったときのことを思い出した。

ポーランドで夜ホテルの部屋に戻るとテレビをつけるのだが、その時点で BBC も CNN も飽きてたので現地のテレビ番組を眺めることにした。が、当然ながら言葉が分からない。チャンネルをザッピングしていると、アメリカ映画らしきものに行き当たった。

日本同様ポーランドでもテレビ放送する映画は吹き替えのようだが、これがおっさん一人で吹き替えなのである。

えっ、マジかよとしばらく眺めていたが、男性女性の登場人物問わずおっさん一人でやっている。それもすべての台詞をぼそぼそっとした感じで特に場面に合わせた抑揚もなく、淡々とポーランド語の台詞を言うのみ。

これはかなり破壊力がある。カップルがバーで楽しげに会話する場面、若い男が笑顔で話すとおっさんがぼそぼそ、対する若い女が最高の笑顔で話してもやはりおっさんがぼそぼそ……なんじゃこりゃ!

ポーランド滞在中複数回そのような映画のテレビ放送を見たが、すべておっさん一人(同一人物ではないと思うが)の吹き替えだった。

あれを体験するとね、二代目磯野波平さんの声がどうとか、芸能人に映画の吹き替えを安易にやらせるなとか、あの声優は良い悪いとか言ってる日本は恵まれてると思うよ(いや、それでも芸能人に映画の吹き替えを安易にやらせるなとは思うけど)。

そもそもポーランド国民はあんな吹き替えで映画を観て面白いんだろうか? と当時思ったが、件の動画をみて少し考えが変わった。同じく共産主義政権下にあったポーランドにも同じような伝説の吹き替えの人がおり、その名残りで今もおっさん一人で吹き替えをしている……わけはないか(笑)

あと Chuck Norris vs Communism のページのビデオテープに "VIDEO KILLED THE RED STAR" と書いてあるのに笑ってしまった。これはもちろんバグルス「ラジオ・スターの悲劇」のパロディーである。

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