取り上げるのが遅くなってしまったが、コンピューター不正行為防止法(Computer Fraud and Abuse Act、CFAA)の適用範囲を狭める判断を米連邦最高裁が行ったことの意義について、日本語圏で報道を見ないので今更ながら取り上げておく。
さて、その意義とは何か? 今回の最高裁の判断を受け、ローレンス・レッシグが以下のようにツイートしている。
Wow. This is a real birthday present: The Court (per Justice Barrett) has radically restricted the scope of the Computer Fraud and Abuse Act — the statute that the United States said @aaronsw had violated. Applying Barrett’s reading, he plainly did not. https://t.co/vbd6aybjAw
— Lessig (@lessig) June 3, 2021
すごい。これぞ本当のバースデイプレゼントだ。最高裁(バレット判事)はコンピューター不正行為防止法――アーロン・スワーツが犯したとされる法律――の適用範囲を根本的に狭めた。バレット判事の解釈を適用すれば、アーロンはまったく法を犯してなかったことになる。
2013年のはじめ、26歳の若さでこの世を去った Aaron Swartz の名誉回復(という言葉の使い方はおかしいかもしれないが)につながるということだ。余談だが、ツイート中の「バースデイプレゼント」とは、レッシグ教授がこのツイートをした前日に60歳の誕生日を迎えたことを指している……って、レッシグさん、還暦か!
ローレンス・レッシグが語るアーロン・スワーツについては、ワタシの文章が参考になるだろう。
「我々の多くは、アーロンを守るために何かできたのではないかと思いながら残りの人生を過ごすことになるだろう。それこそがあらゆる自殺がいたるところでもたらす残酷な帰結なのだ」というレッシグの言葉は、今なお涙なしには読めない。
アーロン・スワーツについてはこちらも参考まで。彼関係の本の邦訳は結局出なかったなぁ。
例によって、この二つの文章(の加筆修正版+追記)を含む電子書籍も宣伝させてください。
この件を取り上げている電子フロンティア財団(EFF)のブログからも該当箇所を引用しておく。
EFF は CFAA などの不明瞭で危険なコンピュータ犯罪法を正すべく長年戦ってきました。本日最高裁が、CFAA の広すぎる適用範囲が、恣意的なサービス利用規約によってほとんどどのインターネットユーザをも犯罪者に仕立てる危険があることを認めたのを嬉しく思います。我々はアーロン・スワーツなど CFAA の濫用による悲劇的で不当な結果を忘れませんし、コンピュータ犯罪法がセキュリティ研究、ジャーナリズム、そしてそれ以外にも最終的に我々皆に恩恵をもたらすテクノロジーの今までにない、相互運用可能な利用を殺すことがなくなるよう戦い続けます。
他にもコリイ・ドクトロウの Pluralistic も参考までリンクしておく。
電子フロンティア財団は、最高裁の判断のセキュリティ研究への影響について触れているが、ブルース・シュナイアーも今回は良い判決で、セキュリティ研究者に恩恵をもたらすものと見ているが、ちょっと気になる点が残っているのに触れているのに注意が必要かもしれない。