著作権を本来の意義と離れ、訴訟による賠償金などを目的として攻撃的に行使する個人や法人を揶揄するコピーライト・トロール(著作権トロール)という言葉がある。
それに関連するものとして、著作権が既に切れているはずなのに関係者が不当に策を弄することで著作権保護期間を延ばす行為を指す Copyfraud についても本ブログで何度か取り上げている。
この記事は、著作権トロールの新種として CopyLEFT Troll なるものを紹介している。
それはクリエイティブ・コモンズに対する誤解につけこんだ悪質なゆすり行為である。
弁護士である Chip Stewart が昨年前半に既に記事を書いていたのな。具体的には CC 2.0 のような古いバージョンだと、通知から30日以内にライセンスの問題を修正する権利が被許諾者に与えられない問題を突く手があるらしい(この問題は、現行のバージョン4.0にはない)。
本件については Rise of the Copyleft Trolls という論文も書かれているので、詳しく知りたい方はそちらをあたっていただきたい。
Techdirt の記事では、有名 Twitter ユーザの(妊娠検査キットの画面上で DOOM を再生したり、新型コロナ検査キットを分解して ARM のチップが入っていることを突き止めたことなどで知られる)@foone が、CC BY ライセンスの画像をクレジットなしに投稿したために DMCA 申し立てで一時的にアカウント凍結されてしまった件を例に挙げている。
これに関しては、ちゃんとクレジットを入れなかったのが悪いだろうというのはその通りなのだけど、自分自身そのあたりちゃんとできているか自信がないときもあるんだよね、正味の話。
ただ、この「コピーレフト・トロール」という言葉は、その意図は分かるけど問題があると思っている。@foone の件(CC BY ライセンスの画像)もそうだが、CC ライセンス=「コピーレフト」じゃないんだよね。
コピーレフト(Copyleft)とは、プログラム(もしくはその他の著作物)を自由(自由の意味において。「無償」ではなく)とし、加えてそのプログラムの改変ないし拡張されたバージョンもすべて自由であることを要求するための、一般的な手法の一つです。
コピーレフトって何? - GNUプロジェクト - フリーソフトウェアファウンデーション
「コピーレフト」の肝は、プログラムや著作物そのものの自由だけでなく、それらの改変版の自由も要求することにある。これを CC ライセンスにあてはめる場合、少なくとも継承(SA)がついた種別でないと「コピーレフト」には当たらないはずである。
このように用語の厳密性の問題があるのだけど、上にも書いたように「コピーライト・トロール」ならぬ「コピーレフト・トロール」と呼びたくなる気持ちは一応分かる。とりあえず、こういうライセンスの悪用もありうることを理解しておくとよいのだろう。
本件とは異なるが、最近も虚偽の著作権侵害を認めて賠償命令がくだった裁判もあったし、著作権侵害をめぐる新たなあくどい手口もこれから出てくるに違いないわけで。
ネタ元は LWN.net。