少し前の記事だが、この記事の中で New York Times 記者の ニコール・パールロス(Nicole Perlroth) と彼女の本『This Is How They Tell Me the World Ends』が言及されるので気になっていたのだが、Message Passing でも morrita さんがこの本を取り上げていて、なるほどと思った。
……今気づいたけど、上の記事を書いているのって、かのガルリ・カスパロフじゃん!
長年サイバーセキュリティ報道の第一線にいる著者の初めての本だが(公式サイト)、「世界の終わりはこうしてやってくる」という書名は伊達ではない。なんというか読んで暗くなってしまう本である。それはワタシ自身この分野に関わっているからなのだけど、とてもワタシ程度の知識で太刀打ちできる話じゃないなと思えてくる。
つまり、最新のサイバー軍拡競争は非常に高度で大規模なものになっており、ソフトウェアのバグに起因するゼロデイ攻撃の「握り」に関し、ソフトウェア業界を支配する企業を輩出したアメリカは、もはやその優位性やコントロールを失っている。
今ではロシアのハッカーによる原子力発電所や電力網に対するハッキングが選挙の脅威となり、サウジアラビアの石油化学プラントに対するサイバー攻撃など攻撃対象はより広範な影響が及ぶインフラがターゲットになっている。
著者は、世界的なサイバー軍拡競争に歯止めをかけないと、我々は皆緊急の脅威に晒されると見ているわけだが、この分野は「民間人は手出しできない国家予算でやる軍事分野になる(もうなってる)」という認識では、「我々にはサイバーセキュリティ分野のマンハッタン計画が必要だ」というマーク・グッドマンの訴えを連想した。
もはや「フューチャー・クライム」ではなく、現実の犯罪になってしまったということか。
ニコール・パールロスの本には、『ツイッター創業物語』のニック・ビルトン、『インスタグラム:野望の果ての真実』のサラ・フライヤー、あとジョン・マルコフといった本ブログでもおなじみの人達が推薦の言葉を寄せており、これは今年あたり邦訳出るんじゃないかしら。