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東京大学学位記授与式の総長告辞でドナルド・フェイゲンの歌詞が引用されてなによりワタシが歓喜

www.u-tokyo.ac.jp

ワタシは柳瀬博一さんの Facebook 投稿で知ったのだが、あまり話題になってないのでここでも取り上げておきたい。

いや、だって、東京大学学位記授与式の総長告辞でドナルド・フェイゲンの「I.G.Y.」の歌詞が引用されてるんだもの。

「I.G.Y.」とはなんぞや? これは総長告辞を引用させてもらおう。

科学技術の発展に対する疑問をよく表した曲として、私の大好きなアーティストであるドナルド・フェイゲンが1982年に発表したI.G.Y.という曲があります。I.G.Y.とは、先ほどの国際地球観測年の英語名International Geophysical Yearの頭文字を取ったものです。この曲は、科学技術が高度に発展した一見便利に思われる未来社会を、皮肉たっぷりに歌っています。人々は、海底トンネルでニューヨークからパリまで90分で移動し、簡単に宇宙を旅行し、人工的に気候を操作し、機械が社会的に重要な判断までしてくれる、“なんて素晴らしい世界なんだろう(What a beautiful world this will be)”、という歌詞になっています。

なぜこれが皮肉に響くのか、その理由の一つは、科学技術の平和利用と国際協力体制の構築を目指した国際地球観測年の理想とは異なり、現実には冷戦を背景とした対立と競争のなかで、科学技術が使われることになってしまったからです。その結果として、環境問題も、人や国の不平等などのさまざまな社会問題も置き去りにされ、科学技術と実社会の課題との乖離が、人々の不信感や不安を増大させました。

令和4年度 東京大学学位記授与式 総長告辞 | 東京大学

ワタシが付け加えることはない。そして、告辞の締めも素晴らしい。

たとえ世界がどんなに大変な状況にあったとしても、決して未来への希望を失わないでほしいと思います。そして諦めないで、これからも学び続けていただきたいと思います。世界中の誰もが先ほど触れたようなセンスを磨いていけば、前に紹介した私が好きな歌に込められていた「皮肉」を乗り越え、実感とともに

“What a beautiful world this will be
  What a glorious time to be free

と歌えるでしょう。この歌詞がみなさんの声で、素直に歌われる日が来ることを願っています。 みなさんのこれからの活躍を、大いに期待しています。修了、誠におめでとうございます。

令和4年度 東京大学学位記授与式 総長告辞 | 東京大学

冨田恵一『ナイトフライ 録音芸術の作法と鑑賞法』の読書記録で書いたように、「I.G.Y.」を含むドナルド・フェイゲンの『The Nightfly』は、曲から歌詞から演奏からアルバムジャケットからもう何から何まで好きな、こちらがどんな気持ちであれ聴くことができる、そして一度聴き始めれば、確実に現実逃避をさせてくれる特別なアルバムなんですね。

そういえば、ワタシにも「I.G.Y.」の思い出がある。昔、FM 福岡のラジオ番組に出演したときに(今では信じられないが、ワタシのような場末の雑文書きをゲスト出演させるクレイジーなプロデューサーがいたのだ)、リクエスト曲を聞かれ、しばらく絶句した後に『ナイトフライ』のタイトル曲をリクエストしたのだが、放送当日に番組を聞いたら「I.G.Y」が流れ出して、椅子から転げ落ちたものである。

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