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クライムズ・オブ・ザ・フューチャー

デヴィッド・クローネンバーグの新作を観るのは『マップ・トゥ・ザ・スターズ』以来になるので、大分経つのだな。

本作の主演は、『ヒストリー・オブ・バイオレンス』以来四度目のタッグとなるヴィゴ・モーテンセンだが、本作での彼の常にローブを身に着け、断続的に咳をする姿は、やはりクローネンバーグなりの老いの表現なんだろうな。

昨年、彼が愛する映画について語り倒す動画を紹介したが、思えばその彼ももう80歳である。これが最後の作品になっても不思議ではない。

そういう意味で、本作は宮崎駿『君たちはどう生きるか』に近い作品なのかも。そう思うのは、本作もストーリーを要約しようのない映画であるのもあるし、本作を観ながら、彼の過去作をいくつも連想したから。

うにょうにょしたベッドや食事をとる際のあのヘンな装置の意匠に『裸のランチ』や『イグジステンズ』を想起したし、肉体の変容にやはり『ザ・フライ』をすら思わせるところもあり、実はワタシは未見なのだが『クラッシュ』を想起した人もいるだろう。主人公が謎のエージェントなところに、思えばおよそ30年前に初めて彼の作品を映画館で観た『裸のランチ』をもっとも近く感じた。

つまり本作は、子供がバリバリとプラスチックのゴミ箱を食べる冒頭の場面から、ワタシが彼に求める奇想と変態美に正面から取り組んだ映画と言える。そして、彼の映画の最大の美点であるハワード・ショアの音楽もある。文句なしだった。上映時間が2時間いかないのもいいね!(これ大事)

本作は近未来が舞台のはずだが、ギリシャアテネの質感を活かした近未来感のない感じ、そしてネットの存在を感じさせない舞台設定もクローネンバーグらしいのかな。必然的に悲劇で終わる過去作よりも、全体的に優しさ、明るさを感じた。

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