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君たちはどう生きるか

公開初日のレイトショーで観た。コロナ禍以降、必ず隣が空席になる席を選んで映画を観てきたが、本作はそうは言っておれず、『TENET テネット』以来の、席がほぼすべて埋まった状態での鑑賞となった。

前作『風立ちぬ』が10年前というのにたじろぐが、今度こそ宮崎駿の最後の作品になるであろう本作は、宣伝を一切行わないという方針もあり、どういう作品かまったく読めなかった(タイトルを借りた吉野源三郎の小説は例によって未読)。

大衆蔑視で名高い宮崎駿による『君たちはどう生きるか』というタイトル、これが上から目線の説教くさい映画だったらどうしようという危惧があったが、見事な冒険活劇だった。

当然、本作は彼の過去作を連想させるところがいくつもある。作品世界が『風立ちぬ』の煉獄で展開する感じであり、個人的にはもっとも『千と千尋の神隠し』を想起させる、ストーリーの整合性はもはやどうでもよく、話の筋を要約できない、先の展開がまったく読めない自在さを誇る。本作の自由過ぎるファンタジー描写は、もっぱら宮崎駿の夢の映画化ではないか。

もはやスタジオジブリは映画を作れる体制にないはずだが、宮崎駿が世界の欠片を我々に託す、つまりは彼の遺言でもある、宮崎駿ラストスタンドのために、数多くのスタッフの献身があったのだろう。

映画を観終わり、シネコンを出たところで、ワタシは無性に「観たぞ! オレは観たぞ!」と叫びたくなった。無駄に力がみなぎるのを感じた。ワタシは父親を82歳で亡くしているが、今年82歳になる宮崎駿が、死の気配をしっかり感じさせる作品なのに、同時にこんなにも好き勝手で精気がみなぎる映画を作ったことに敬意を表したい。

映画鑑賞後、オレはこれを今夜観た! と、それ自体を誇りたくなる幸福感を覚えたのっていつぶりだろう。

さようなら、全ての宮崎駿

ありがとう、全ての宮崎駿

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