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Dr.パルナサスの鏡

テリー・ギリアムは前作『ローズ・イン・タイドランド』が途中で席を立ちたくなったほどの映画で落胆したが、今回は事前情報から極私的ギリアム最高傑作な『バロン』の夢再びを期待していた。

本作は主演俳優であるヒース・レジャーが急死したため一時製作が暗礁に乗り上げたものの、ジョニー・デップジュード・ロウコリン・ファレルという三人のスター俳優が代役をかってでたことで完成にこぎつけた映画であることが知られている。

正直代役といってもねぇと高を括っていたのだが、本作を観るとヒース・レジャーの死を無駄にすまいというギリアム、キャストの意思が伝わってくる。「鏡の向こう」という設定で助かってるところはあるが、違和感を与えないような見せ方の工夫がちゃんとなされていて感心した。悪魔役のトム・ウェイツも貫禄十分でよかった。

上で『バロン』の夢再びと書いたが、チャールズ・マッケオンの脚本参加、小人への愛着、場末の見世物小屋、日常にいきなり立ち現れる幻想的な映像、何より想像力(ファンタジー)という武器……どれも『バロン』と共通する要素であり、ギリアムらしい傑作を予感した。確かに前作、前々作よりは明らかに「戻って」きているが、残念ながらあの域には達していない。テンポが悪いというか映画を貫くリズムを獲得できていないように感じられた。

それにしても惜しまれるのはヒース・レジャーの死である。映画界にとっても本作にとっても。本作のあらすじ紹介などを読むと彼の役をヒーローだと思うかもしれない。ただそれはちと違うのだ。これ以上はネタバレになるから書かないが、「鏡の向こう」で彼が辿る最後まで通して演じていれば、本作は上に書いたリズムを得ていたかもしれない。

いったいどういうオチがつくのだろうと後半不安になったが、最後がすごく感じが良くて、それで印象がかなり持ち直した。かつてのギリアムだったらこうはしなかった終わり方かもしれないが、彼自身の娘を想う気持ちも反映しているのかもね。

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