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ダークナイト ライジング

ダークナイト ライジング Blu-ray & DVDセット(初回限定生産)

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遂に観たどーーっ! 本作については、予告編を映画館で一つ観ただけで、以降はできる限り情報をシャットアウトして、なるだけ事前情報を入れずに観ることにしたが、ホント大変だった……

結論から書くと、『ダークナイト』をはっきり下回る傑作映画だった。

クリストファー・ノーランの映画については『インセプション』のときも思ったが、映画を観ている最中はその映像技法にもうどうにもこうにも引き込まれ盛り上がるのだが、終わった後は結構後が残らないところがある。そうした意味で何かあれば語りたくなる『ダークナイト』は例外過ぎる映画だったのかもしれない。

本作は飛行機を使った豪快なアクションから始まるが、これを観て『ダークナイト』オープニングの銀行強盗はなんと鮮烈でエキサイトだったんだと痛感させられる。しかし、『ダークナイト』を例外たらしめたジョーカーがいない以上、本作の悪役ベインがエキセントリシティでなしにオーソドックスに肉体的、精神的なタフさ、強度を強調するのはよく分かるし、前作のヒース・レジャー同様、本作でもトム・ハーディがまったくイメージを変えた演技を見せている(『Warrior』が日本未公開なのも大きいが)。

本作は当然ながら、スーパーヒーローの力の行使と正義というテーマを問うた『ダークナイト』の延長上にあり、それから浮かび上がるのは、結局バットマンという異人の姿でないと生の実感を得られないブルース・ウェインのフリーキーさであり、それを演じきったクリスチャン・ベールに何というか感謝の念が湧いた。

ダークナイト』ではバットマンとジョーカーのコインの裏表な関係が強調されたが、本作のベインはこりゃどうしようもなかんべというところまで容赦なくバットマンを追い込み、ゴッサムシティそのものを破壊し尽くさんとする。惜しいのは、ベインが転覆させようとした市民の秩序の崩壊が表現されきってないところ。まぁ、これも『ダークナイト』の祈るように観てしまうカットバックと比較してしまうからなのだろうが、ノーランは本作のために「オキュパイ運動」の撮影を行っていたという報道を読んだ覚えがあるが、そこらへん入れたかったはずと思うんだけどね。

ノーランのバットマン三部作は、作を経るごとにどんどん時間が長くなっていく。前作の二時間半を見事に押し切ったときもすごいと思ったが、本作もそれ以上の時間をまったくだれることなく、前作の問題意識のヘビーよりも視覚的なヘビーさを堪能できたように思う。

上映時間の長さは新しい登場人物の多さももちろんあって(しかし、本作もしっかりキリアン・マーフィが出ていてニヤリとしてしまった)、本作では老練な執事以上の演技を見せているマイケル・ケインと比してモーガン・フリーマンの良い場面がなくて残念だったが、彼とベールとの会話はラストの伏線になっていたり、ある新しい登場人物が見事な「転」の基点となり、クライマックスにつながっていくところなど見事だった。本作製作前のノーランの発言からして容赦ない終わり方となるのは予想通りだったが、意外にも精神の継承と続きを可能にするラストはちょっと意外だった。

正直ベインとバットマンがもっとうまく噛み合ってほしかったし、登場人物のインフレで焦点がぼやけたところは確実にある。しかし、本作はノーランの三部作の最後を飾る見事なフィナーレであった。で、その後には特に何も残らないのだけど。

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