- 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
- 発売日: 2008/12/10
- メディア: DVD
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圧巻、としか表現のしようのない傑作だった。
ワタシはティム・バートンによるものをはじめ映画版バットマンをほとんど観たことがなかったのだが、以前映画館で観た本作の予告編がバットマン映画の続編だとにわかに確信がもてないほど異彩を放っていたのが気になり、少し前にテレビでやってた前作『バットマン ビギンズ』が(公開当時好意的な評をあまりみなかった覚えがあるのだが)なかなか面白かったので本作も観てみた。
主演のクリスチャン・ベールをはじめとして、マイケル・ケイン、モーガン・フリーマン、そしてゲイリー・オールドマンと名優達が前作同様脇を固めていて嬉しかったが、ただ本作を特別な映画にしているのは、やはり本作公開前に急死したジョーカー役のヒース・レジャーなのは間違いない。
メイクが取れかけた顔での演技の迫力もさることながら、その顔の由来を毎回デタラメに語りながら、金や欲望といった根拠なしに嬉々として人を殺し続けるジョーカーは怪演なんて言葉では足らない。思った通りに起爆せず、装置をかちゃかちゃやる仕草などのコミカルさまで含めすごかった。
本作は二時間半以上の長丁場で、終わってみたらあっという間だった、なんていう爽快さはなく、まさにその長丁場をしっかり観客に味合わせながら観客を揺さぶり続けるこの作品の躍動感は一体何なんだと思う。
ハリウッドの映画制作をファンドが牛耳るようになり、アメコミの映画化やリメイクものしか作れなくなった、というのは町山智浩さんがよく語られていることである。
本作はマスクを着け続ける異人としてのバットマンの本質を正面からとらえた紛れもないバットマン映画でありながら、同時に「アメコミの映画化」という言葉から想起されるものとは異質のレベルのアクションサスペンス映画にして、同時に正義とヒーローというテーマを問うており、町山さんが語る構図への見事な逆襲といえるかもしれない。
ただ本作のせいで、無闇に暗くて悪役が無駄にエキセントリックな「アメコミの映画化」が続きそうな懸念もあるが。