実はこのエントリは、一つ↑のエントリの続きだったりする。
お懐かしや、『ザ・サーチ』のジョン・バッテルのブログでビル・グロスを取り上げている。
……といっても今では彼について説明が必要だろう。彼は「ペイドサーチ(paid search)」と呼ばれるインターネット広告の方法を開発し、GoTo.com を起業し(後の Overture)、マイクロソフト、AOL、Yahoo! という当時の三大インターネットプラットフォームと検索収益化パートナーシップを締結した。
で、その手法を Google が借用して検索の巨人となったのはご存じの通りである。
検索技術が今日のインターネットを築き上げたわけだが、今や生成 AI が「ペイドサーチ」のビジネスモデル構造を破壊しようとしている。Google もそれを促進しているのは、ワタシも「Googleからウェブサイトへのトラフィックがゼロになる日」で一年前に書いている。
そこに「ペイドサーチ」のオリジネーターであり、『ザ・サーチ』でも一章割かれているビル・グロスが ProRata.ai で再度参入しようとしている。
現在のインターネットは機能不全に陥っているとグロスは主張する。インターネットサイトと検索エンジンとの「サイトをクロールさせてくれるなら、その見返りにトラフィックを送る」という取引が、AI 企業によって歪められてしまったからだ。
しかし、グロスは AI による回答エンジンを悪と考えてはおらず、むしろ ChatGPT のようなサービスは、検索を10倍改善していると評価する。しかし、新たな収益化モデルが必要である。
グロスの ProRata は、四半世紀前に Overture が検索に果たした役割を再現し、生成 AI の収益化エンジンを構築することをミッションとしている。
それは、AI クローラーがコンテンツを収集して再利用する際に、パブリッシャーに報酬が支払われる仕組みを確立し、AI の回答エンジンの文脈で機能する広告ソリューションを構築することである。それは AI が支配するインターネットで、広告がどのような形をとるべきか考え出すことでもある。
例えば、Cloudflare は AI クローラーを無限生成迷路に閉じ込める技術を開発しているが、仮にすべてのウェブサイトが AI エージェントをブロックしたら、AI サービスはサイトオーナーに金銭的報酬を提示するしかない(CC Signals はそこで機能するかもしれない)。が、AI 企業はそんな余裕はないと言う。そこでグロスの広告ソリューションが彼らの収益を三倍にしたら、支払う余裕ができるというわけだ。
そんな簡単にいくかよとツッコみたくなるが、広告がいつだってインターネットの生命線だったことは確かであり、昔「ペイドサーチ」を生み出した男が、AI 時代の広告ソリューションに取り組み、パブリッシャーと AI 企業が収益を分配する仕組みを作ろうとしているのは、『ザ・サーチ』のジョン・バッテルなら取り上げたくなるよなと思った。
……うーん、このエントリとひとつ上のエントリをまとめて WirelessWire News 連載の原稿にすればよかったかも(笑)。
ネタ元は Doc Searls Weblog。