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ロバート・アルトマン/ハリウッドに最も嫌われ、そして愛された男

世界三大映画祭すべてで最高賞をとった70年代以降唯一の監督ロバート・アルトマンの伝記映画をみんな観ような! と書いた以上、ワタシが行かないわけにはいかない。

オーソドックスな伝記映画だった。アルトマンの映画の出演者たちももちろん登場するが、それは時間とすればとても短く(『ザ・プレイヤー』ですごく皮肉な使われ方をされただけなのに、こういう映画に出て、期待されている言葉を堂々というブルース・ウィリスは偉いね)、本作がアルトマンの妻をはじめとする彼の家族にとってのものであることが分かる。

独学でキャリアを積んだテレビ時代、カンヌでグランプリをとった『M★A★S★H』に始まる栄光の70年代、しかし、70年代末から興行成績に苦しむようになり、『ポパイ』の大失敗からの低迷の80年代(オフブロードウェイの舞台を手がける彼に対して、落ち目になったのでは、と容赦なく聞かれるインタビュー映像もある)、『ザ・プレイヤー』による復活の90年代、そして晩年までもちろん映画監督としてのアルトマンの仕事もしっかり紹介される。ワタシなど彼のファンのような顔をしているが、未見の代表作がいくつもあることを再確認したりもした。

上に書いたように、本作は何よりアルトマンの家族のためのもので、未発表の短編などの他にもホームビデオの映像が多く使われている(アルトマンのヌードも見れるぞ(笑))。息子さんが彼の映画にスタッフとして参加するようになり、父親と一緒にいれるようになり嬉しかったと言ってのが印象的だったが、アルトマンが晩年には家族との時間を大切にするようになり、感謝祭などで一族が集まるとそれを離れたところから眺めてニヤっと笑っていたそうで、彼が得意とした群像劇のキャストを集まった家族に見立てていたんだろうな。

まさに死についての映画であり遺作なのにとても晴れやかな『今宵、フィッツジェラルド劇場で』、そしてアカデミー名誉賞受賞スピーチにおける、10年前に心臓移植をしたことにひっかけた、「私はあと40年くらい生きるのだから、アカデミーは早まったんじゃないかと思う」という言葉までくるとほろりときた。

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