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初期のフェイスブックの投資家でもあったベンチャーキャピタリストが書く痛烈な反フェイスブック本『Zucked: Waking Up to the Facebook Catastrophe』

大原ケイさんから教えてもらったのだが、Facebook の初期に投資を行っていたベンチャーキャピタリストのロジャー・マクナミー(Roger McNamee)が書いた Facebook 批判本 Zucked が話題である。

Zucked: Waking Up to the Facebook Catastrophe

Zucked: Waking Up to the Facebook Catastrophe

Zucked: Waking Up to the Facebook Catastrophe (English Edition)

Zucked: Waking Up to the Facebook Catastrophe (English Edition)

ロジャー・マクナミーという人は、プロのミュージシャンでもある一風変わった人物だが、ベンチャーキャピタリストとしての実績に疑いはなく、著書の邦訳も一冊ある。

ニューノーマル―リスク社会の勝者の法則

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前述の通り、彼は初期 Facebook の投資家であり、内部から知る人物でもある。その彼が Facebook を強く批判するようになったわけだが、Wired の長編ルポ「INSIDE Facebook」シリーズ(連載)においても何度か名前が出てくる。

かなり長くなってしまうが、それを読めばその経緯と彼の重要性が分かるので、以下その部分を引用する。

フェイスブック関係者のうち、最初にプラットフォームの異変に気づいたのは、ロジャー・マクナミーだった。2016年2月のことで、フェイスブックはちょうどトレンディング・トピックス部門のスキャンダルで炎上していた。

マクナミーは初期のフェイスブックに投資を行っていたヴェンチャーキャピタリストで、マーク・ザッカーバーグにメンターとして2つの重要な助言をした。1つは06年、フェイスブックを10億ドル(約1,100億円)で買収したいというヤフーからの提案を断ること。2つめは08年、グーグル幹部だったシェリル・サンドバーグを引き抜いてビジネスモデルを構築することだった。

マクナミーはその後、ザッカーバーグとあまり連絡を取っていなかったが、フェイスブックへの投資は続けていた。そして16年2月、大統領選で民主党候補だったバーニー・サンダースのキャンペーンにまつわるニュースに疑念を抱き、注目し始めた。

「インターネットミーム[編註:インターネット上で拡散される物事]を観察していたら、Facebookのフィードに流れてくる投稿のうち、一見、サンダース陣営の関係者のグループによると思えるようなものがあった。しかし、実際にはおそらく違っていたんだ」

マクナミーはそう振り返る。

「そうした投稿は組織的に拡散されていて、金で雇われたサクラがいるとしか思えなかった。わたしはPCの前で考え込んでしまった。『どう考えてもおかしい。よい兆候じゃないぞ』とね」

第3章:不審な影──連載「INSIDE Facebook」|WIRED.jp

一方、ヴェンチャーキャピタリストのロジャー・マクナミーは、フェイスブックの反応に激怒していた。ザッカーバーグシェリル・サンドバーグ宛に警告の手紙を送ったあと、ザッカーバーグサンドバーグはすぐに返事をよこしたが、そこには表面的なコメントしか書かれていなかったのだ。

しかもそのあとマクナミーは、フェイスブックのパートナーシップ担当副社長のダン・ローズと、無益なメールのやり取りをすることになった。マクナミーによると、そのメッセージは一見、丁寧にみえたが、慇懃無礼なものだったという。

その内容は、こうだ。フェイスブックは、マクナミーが知らないところでよいことをたくさんやっている。そして何よりフェイスブックはプラットフォームを提供しているだけであり、メディア企業ではない──。

「そのメッセージを見て思ったんだ。『おまえら、そんなやり方が通ると思うなよ』とね」と、マクナミーは振り返る。「自分たちがプラットフォームだなんて言い続けていれば、そのうち痛い目に遭うだろう。ユーザーがそんなふうに思ってくれなくなったとき、そうも言っていられなくなるだろうな」

「可愛さ余って憎さ百倍」とはこのことだった。マクナミーの怒りに火がつき、ある「同盟」が結ばれることになった。マクナミーは2017年4月、ある人物とブルームバーグTVで共演して意気投合した。グーグルでデザイン倫理担当だったトリスタン・ハリスである。

第7章:反フェイスブック同盟──連載「INSIDE Facebook」|WIRED.jp

かくして Facebook の批判者の側にまわったマクナミーだが、「可愛さ余って憎さ百倍」レベルにおさまってはいない。新刊を受けての Guardian のインタビューを読んでも、「これは Facebook だけの問題ではなく、巨大テック企業の有害なビジネスモデルという業界全体の問題だ」という認識である。

そうした意味で、Zucked の推薦者にヴィント・サーフやビル・ジョイやマーク・ベニオフといった著名人に加え、『大企業の呪い』という新刊を出したティム・ウーなどが名前を連ねているのは象徴的で、いわゆる GAFA はもっと政府の規制を受けるべきというのが欧米の知識人のコンセンサスというのは知っておくべき空気感だろう。

マクナミーが、Facebook だけの問題ではなく巨大テック企業の有害なビジネスモデルの問題というのは、ショシャナ・ズボフ『監視資本主義』にもつながるだろう。

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