星暁雄さんのツイート経由で知った文章だが、面白かった。
正直「Web 3.0」というタームも、上で書いた「〇〇2.0」と同じくらい使い古されたものだけど、目的意識がはっきりして再度輝き出した感がある。目的意識とは何か? ズバリ、decentralization である。そうである、『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』にもつながる話なのだ。
この文章は、ウェブの歴史のおさらいから始まる。
昨年ウェブは30周年を迎えた。しかし、ウェブの父ティム・バーナーズ=リーは、その現状が我々が望んだものとは思っていない。
1989年にウェブが誕生し、1995年を「Web 1.0」とすると、Web 1.0 は decentralized でありオープンソースであり(当時、その言葉は発明されてなかったが)、だからこそ Google や Amazon が生まれる余地があったのだが、同時に read-only でもあった。
そして、その10年後の2005年が「Web 2.0」であり、ウェブは read-only から読み書き可能になった。が、同時にウェブは徐々に centralized になり、スマートフォンの普及もそれを後押しした。
ご存知の通り、「Web 2.0」という言葉は、ティム・オライリーが作ったバズワードであり、このキャッチーな言葉が広まるにつれ、「それなら Web 3.0 はどんなものになる?」というのが当時から言われた。
当時は「AI のウェブ」「VR のウェブ」を Web 3.0 と見立てる人がいたが、この文章の著者の Tony Aubé は納得しなかった。
で、昨年 Web3 Summit がベルリンで開催されたのだが、そこでのメッセージは明確だった。
Web 3.0 is about re-decentralizing the Web.(Web 3.0 はウェブを再度脱中央集権化する)
なぜ再度 decentralized にする必要があるのか。それは現在のウェブは壊れてしまったという認識があるからだ。その原因は以下の通り。
- ウェブのデフォルトのビジネスモデルとしての広告
- データ漏洩
- 企業や政府による監視
- 政府による検閲
- データの損失(ウェブサイトの寿命は短い)
Web 3.0 はこれらの問題を解決するためにウェブの構成要素をアップデートしようという試みなのだ。Web 3.0 で何が変わるのか? 以下が Web 3.0 がもたらす3つの革命である。
お金の話を可能にしたのは言うまでもなくビットコインなわけだが、それが可能にしたイノベーションを著者は Internet of Value(価値のインターネット)と呼んでいる。
分散アプリケーション、ユーザのデータのコントロールについてもブロックチェーン技術が可能にするという見立てである。
Web 3.0 により我々は仲介なしにお互いとやりとりができるようになり、それがウェブを再度脱中央集権化させると著者は宣言する。
面白いと思ったのは、Google のかつての非公式社是の「Don't be Evil」を引き合いに出し、Web 2.0 はこうした誓約に依存していたが、Web 3.0 はウェブの基盤を作り直すことで「Can't be Evil」になるという見方である。これはキャッチーだね。
これに対して、これを革命とは言い過ぎとか、見通しが楽観的過ぎるといった批判はあるだろう。しかし、かつて「もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて」を書いた人間としては読んで嬉しくなった。
それにこれを書いたのが Google AI の人というのも面白い。