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The Best Years of Our Lives

「"わたしがおまえたちを滅ぼすとして、それがおまえたちとなんの関係がある?"」
(劉慈欣『三体Ⅱ 黒暗森林』)

はじめに

この文章は、2020 Advent Calendar 2020 の第21日目の記事として書かれています。昨日は june29 さん、明日は pbn broadcast さんです。

2019年のこと

「ベスト・オブ・2020」について書く前に、前置きとしてその前年のことを少しだけ振り返っておきたい。

2019年は仕事を変えた関係で、やたらと東京出張が多かった。その副作用で業務後に人と会う機会を持て、サイゾーの「クロサカタツヤのネオ・ビジネス・マイニング」になぜか登場なんてこともあった。

当然のように、2020年もその延長線上で、海外含めいろいろ行き来するのだろうと思っていたが、まさかこんなことになろうとは。

昨年に会った中で特に印象的だったのが八田真行で、氏のことは以前より人間的な好き嫌いは別としてその仕事に敬意を払ってきたが、その日聞いた彼の発言をひとつとしてここに書けないという意味で、そのナチュラルボーン危険思想ぶりにこの人は本当に恐ろしいと畏敬の念を強くした。

インフルエンザ

2020年に入り、新年を迎えて少しは気を張っていたのが、早々にインフルエンザにかかり、出鼻をくじかれた形である。予防接種は前年秋に受けていたのだが、かかるときはかかるということか。

以前にもかかったことが絶対あるはずだが、医者にインフルエンザと診断されたのはこれが初めてだった。

初めてのものはなんであれ少しウキウキするもので――などと状況を楽しむ余裕はなく、特に熱が39度5分まであがると身動きが取れなくなる。

ただ心底辛かったのは一日程度で、その後は快方に向かった。ワタシが一月前半にインフルエンザにかかったおかげで、その報を機に職場で手指消毒用アルコールやマスクを購入することができた、と後に上司にヘンな感謝をされたりもした。

それから間もなく、アルコールもマスクも簡単に手に入らなくなる事態になろうとは思っていなかったわけで。

不眠症

大学時代まではいささか神経が過敏で(また精神の鋭敏さに対する憧れもあったろう)、寝つきが悪く不眠症に悩まされたものである。

それが就職してからは、酒をかっくらって高いびき、というだらしない有り様に無事落ち着いたのだが、それでも年に一二度は突発的にまったく眠れなくなる日がある。

コロナ禍で部屋にこもる時間が圧倒的に増えるとその不眠症が再発し、以前は年に一二度だったものが週に一二度くらいの頻度になって疲弊させられた。それにともなって酒量も増え、免疫力の低下の自覚もあった。

寝付けないままに悶々と考えることは、「これでは務める会社がどうなるか分かったものじゃない。というか、じきに自分も首切りにあって路頭に迷うのではないか。失業者だらけになれば、何の取り柄もなく若くない人間の再就職は難しかろう。故郷の実家に引きこもり、貯金を取り崩すとして何年持つか。それが尽きた後は――」という具合に陰鬱かつ凡庸なものだった。

ここまで読んで、その愚鈍さに既に引かれているだろうが、さらにもう一つ人間の小ささを白状しておくと、ワタシもいくらか株や投資信託に手を出しており、コロナ禍においてそれらの値が思い切り下がったのも精神的に結構ダメージがあった。

別に資産の大半を突っ込んでいたわけではないが、それでも三桁にはなるわけで、今年のはじめにプラス数十万だった評価損益が、あっさりマイナス数十万になっているのを見て平静でいるのは難しかった。

後になって、先崎学が『うつ病九段』(asin:4167915332)で書いていた「貧困妄想」に近いものを自分も抱えていたと思い当たるのだが、そういえばこの時期必死に将棋についての文章を書きあげている。

note.com

帯状疱疹

4月に入り、頭痛とともに熱が37度台に達したとき、とうとう来るものがきたとも思ったが、一方で少し前から頬の腫れもあった。果たしてどちらだろうと思っていたら、金曜朝に顔じゅうに症状が出ていたので答えが出た(今にして思えば、「両方」という可能性もあったわけだが、そのときは思い至らなかった)。

業務後に近所の皮膚科に出向き、一目で帯状疱疹の診断をいただいて薬を処方してもらったが、その日の夜からこれまでの人生で味わったことのない頭痛を体験することになる。

処方された頭痛薬を飲んでも改善せず、一晩中枕に顔を埋めて文字通り悲鳴をあげた。もうどうにもならないと朝方に生まれて初めて #7119 に電話をして事情を説明し、何か状況を改善する方法はないか教えを乞うた。

救急相談センターには、帯状疱疹は痛むところを温めるとよいので、水を絞ったおしぼりをレンジでチンして頭にあてろという方策を教えてもらった。これをやると確かに頭痛が大分マシになった。が、おしぼりが冷めた後のぶり返しの頭痛が凄まじく、再度おしぼりをレンチンする気力もなく、再び枕に顔を埋めて喉がおかしくなるくらいの絶叫となった。

しまいにはなぜかベッドを抜け出てソファーで気絶するように少しだけ寝て、目が覚めてから皮膚科を再訪し、頭痛薬を上限まで出してもらったが、部屋にあったあずきのチカラ首肩用をレンジでチンして、頭の痛む部位にあてるのが劇的に効果があった。

頭痛と比べると顔面の痛みは大したことがなかったが、それでも頬の腫れが引いてから痕が残った。若い頃であれば随分気に病んだに違いないが、そうでなくても顔にシミやシワが出る歳であり、割とどうでもよかった。

実はコロナ禍における情報共有と自由をテーマに長編技術コラムを書きたいという意欲が久方ぶりに高まり、それに向けて資料を地道に集めていた。文章を書きあげて、2018年秋の「インターネット、プラットフォーマー、政府、ネット原住民」以来の『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』の追加コンテンツにしようという思惑があったのだが、帯状疱疹のために時間をロスしてタイミングを逃したと感じると、やる気が失せてしまったのは残念なことである。

達人出版会高橋征義さんのおかげで、この電子書籍Kindle 版が今夏に出たのは著者としても驚きだった。

コロナ太り

酒量が増えると、それに伴って摂取するツマミの量も増え、それが蟄居生活による慢性的な運動不足と重なると必然的に太るわけだ。少しは室内で運動したり、夕食後に近所を歩く時間を増やしてみたが、コロナ禍前と比べて5キロは太ってしまった。

何しろコロナ禍前ですら、最低でもここから5キロは痩せないと話にならない(それを達成しても身長に対応する標準体重には遠い)と言っていたところに、痩せるどころかさらに5キロ増しである。もともと十分にデブだったのが、目もあてられないデブになり果ててしまった。

これに関しては自業自得としか言いようがない。案の定、過去の定期健診では悪玉コレステロールの値が高いのを除けばなんとか基準内に収まっていたものが、今年は決壊を思わせる数値がいくつも出ている。来年からは、酒量を抑えるのをはじめとして相応の努力が必要になろう。

ハッカー(笑)

2020年の個人的な成果を強いて挙げれば、CEH(Certified Ethical Hacker)の資格を取得したくらいで、最後になってなんとか間に合った形である。

IT 系の資格取得に意義はあるか? という話は未だに時折蒸し返されるが、突き詰めれば「取りたきゃ好きにしたら?」で終わる話で、つまりどちらか選ぶなら「ない」になる。そうでなくてもその方面の資格なら CISSP じゃね? と言われそうだが、この歳になってまさか自分が「ハッカー」、しかも『ハッカーズ大辞典』(asin:475614084X)で定義されるような正統的(?)なプログラマ像より、フードをかぶり暗い部屋でカタカタやってるようなイメージの「ハッカー」寄りの認定を受けたのが皮肉というか、そこはかとなく可笑しくていくらか慰めになった。

来年が今年よりひどくならないと誰が決めた?

2020年ももうすぐ終わりである。第三波による新規感染者数も重傷者数もクライマックスの様相を呈し、医療崩壊が現実のものとなったのもあり、故郷の実家で帰省するために購入していたフライトを先日泣く泣くキャンセルした。早割で買っていたため取消手数料がデカくてショックを受け、貧困妄想が一気にぶり返しそうだった。

それに限らず、とにかく堪えることの多い一年だったし、コロナ禍に対する日本政府の無策(むしろマイナス方向に足を引っ張っているようにすら見える)には苛立たされた人は多いだろう。

しかし、正直こう考えていたところはないだろうか?

「確かに日本の今の有り様はひどい。しかし、アメリカや欧州と比べれば、感染者も死者もはっきり少ない。あれと比べれば、我々はそれなりによくやっているではないか」

下を見て自尊心を保つのは卑しいと言われるかもしれない。でも、その心性がまったくないという人がどれだけいるだろう。正直に書こう。ワタシの場合、そうした欧米との比較で気持ちを保っていたところが確実にあった。

しかし、アメリカと英国で開発されたワクチンが実用化され、それもじきに覆される。

英国の医療調査会社エアフィニティーの予測によれば、ワクチン接種により日本が「社会が日常に戻る時期」は再来年4月で、これはアメリカよりも一年近く遅いばかりか、英国よりも欧州よりもオーストラリアよりも、さらにはラテンアメリカよりも遅い。早い話、先進国でもっとも遅い。

正直、アメリカが2021年4月に「社会が日常に戻る」なんて俄かには信じられないが、アメリカが遅れるかわりに日本が早くなる理屈はなく、大きなタイムラグがあることに変わりはなかろう。英国や欧州やカナダとの半年以上のタイムラグもまたしかり。

ゲームチェンジャーとはこのことである。日本はワクチン開発においても敗けたのだ。

日本よりひどい状況にあると思っていた国が、気がつけば当然のようにコロナ禍から立ち直り、大枠元に戻っているのに、我々は雪の中裸で外に放り出されて寒さに震え続けるような有様で耐え続け、医療崩壊におびえ続け、そこにだめ押しのように感染症対策が実質ノーガードで神風特攻的に東京オリンピックが強行され――という悪夢のような2021年のイメージが容易に想像できて暗い気持ちになる。

どうかこれが現実にならないでほしいと願うばかりである。まぁ、新型コロナウイルスの変異株のおかげでそんな見通しすべてがどっちらけというシナリオだってありうるけどね!

以上がワタシの「ベスト・オブ・2020」である。

最後に

はじめに書いた通り、この文章は 2020 Advent Calendar 2020 の第21日目の記事である。

ワタシはこれまで一度も Advent Calendar というヤツに参加したことがなく、というかこれまで誰からも誘われたことがなく、年末になると密かにいじけていた。なのに、昨年 taizooo さんに 2019 Advent Calendar 2019 にお誘いいただくと、今度は緊張で硬直してしまい、果たして自分に何が書けるだろうと自問しているうちにカレンダーがすべて埋まっていたという体たらく。

ワタシの人生、大方そんな感じだよな、とまたしてもいじけてしまったのだが、今年も懲りることなくロートルにお声をかけてくださった taizooo さんに感謝する。

雑文書き・翻訳者としての yomoyomo は2016年末をもって終わった存在であり、そうでなくても今年あったネット関係での不愉快な話は書きたくないので、本ブログにおいては例外的だが、端的にワタシ自身のことを書かせてもらった。

本日の更新が、本ブログの2020年最後の更新になる。

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