気になっていた映画なのだが、公開から三週目でまだレイトショーをやってくれたおかげで観に行けた。KBC シネマ万歳!
金曜の夜、一週間の仕事の疲れもあり、最初のほうはリゾート地でリラックスする親娘とともにワタシまでうつらうつらしそうになったが、それを乗り切るとなんとも不思議な魅力のある作品世界に浸ることになる。
主人公の少女にとってリゾート地は冒険や誘惑があるところだが、本作ではとりたてて事件は起こらないし、ほとんど言葉で説明されない。しかし、徐々に徐々に11歳の娘と31歳になるまだ若い父親の親娘の関係性、というか父親の危うさが見えてきて、やがて来る束の間のバケーションの終わりがどうなるのか、我々は気楽に見始めたはずの20年前に撮られたホームビデオを息を詰めて見届ける気持ちになる。
後半が不気味に引き延ばされるブラーの「Tender」、父親がカラオケで歌うのを頑なに拒否する R.E.M. の「Losing My Religion」、そしてストロボが効果的に使われ、原曲ではフレディとボウイによるいかにも芝居がかった「Under Pressure」が歌詞通り「プレッシャー下での最後のダンス」を切実に表現するといった感じで、本作は重要なところがそれぞれ年代が異なる楽曲で表現されるところが巧みだった(チャンバワンバ「Tubthumping」の話は止めておこう)。
ラストシーンで父親が空港のドアの向こうに去っていく寂寥感と不気味さが、父親のその後を表現しているのだろうな。