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自動車メーカーは顧客の運転動作を保険会社と共有している

www.nytimes.com

この記事は、シアトル近郊のソフトウェア会社のオーナーであるケン・ダール氏の話から始まる。いつも安全運転を心がけている65歳の彼は、2022年にリースしているシボレー・ボルトの保険料が2割以上も跳ね上がったのに驚いた。他の保険会社にも見積もりをとったが、どこも高い。なんでやと思ったら、世界的なデータブローカーの LexisNexis のレポートが原因らしい。

ダール氏が LexisNexis に要求したところ、258ページに及ぶ「消費者情報開示報告書」を送ってきた。そこには130ページにわたり、彼と妻が過去6か月間にシボレー・ボルトを運転した詳細(日付、運転の開始/終了の時刻、走行距離、スピード違反、急ブレーキ、急加速)が記されていた。

その走行内容は、シボレー・ボルトの製造元であるゼネラルモーターズから提供されており、LexisNexis はその運転データを分析し、リスクスコアを分析する。保険会社はどこもそのスコアを参照するので、どこで見積もりをとっても保険料が高く出たのだ。ダール氏は、そんな情報が共有されるなんて知らなかったので、裏切られた気持ちになった。

近年、自動車会社はインターネットに接続された自動車から直接詳細な運転情報を収集し、保険会社に提供している。そして、GM、ホンダ、起亜、ヒョンデなどのメーカーは、コネクテッド・カーのアプリのオプション機能で、ドライバーの運転を評価する機能を提供し出している。それが LexisNexis のようなデータブローカーに情報が渡ることを理解しないままこの機能をオンにするドライバーも多いのではないか。

問題なのは、GM車のドライバーには、そうした機能をオンにしていなくてもデータを追跡され、保険料があがった人がいるらしいこと。カリフォルニア州のプライバシー規制当局は、自動車メーカーのデータ収集慣行を調査しており、それが消費者に損害を与える不公正で欺瞞的な商習慣を禁止する連邦法である連邦取引委員会法第5条に違反する可能性があるとのこと。

その後もダール氏の受難の話が続くのだが、「スマート・ドライバー」機能には注意が必要ということですな。GM のマニュアルによると、この機能を顧客に登録させると営業担当者はボーナスを受け取るとのことで、自動車購入時によく分からないままオンにさせられる顧客も多いことがこの記事でも何度か示唆される。

昨年、自動車業界のプライバシーポリシーはあらゆる業種の中で最悪と訴えるレポートが Mozilla から出て、なんで Mozilla が? と思ったものだが、この記事でも Mozilla の研究者の Jen Caltrider が、以下のコメントを寄せている。

「自動車会社は、これらの機能を安全性と結び付け、すべては安全のためだと言うのが実にうまい。連中の目的は金儲けなのに」

この記事では GM の事例が主に扱われているが、運転行動を共有する自動車メーカーとして、他にも起亜、スバル、三菱も LexisNexis のサービスに参加していると書かれている。

ワタシも2022年に「車から収集したデータはどこに送られているのか?」というエントリを書いているが、「コネクテッドカー」購入時によく分からないままデータ収集を承知させられ、その結果、納得いかない基準で保険料が跳ね上がる可能性があることは承知しておいたほうがよさそうだ。

ネタ元は Pluralistic

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