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2024年上半期にNetflixで観た映画の感想まとめ

yamdas.hatenablog.com

2021年以来半年ごとにやっている、Netflix で観た映画(近作のみ)の感想まとめを今年上半期についてもやっておく。

実はこの半年、Netflix はドラマばかりで映画はあまり観ておらず、6月にまとめて数本観て、結果的に本数を稼いだ感じである。

スパークス・ブラザーズ(公式ページNetflix

スパークスは、実は長らくあまり好きではなかったのだけど、エドガー・ライトスパークスに対する深い愛情が伝わる本作を観て、大分彼らの音楽を近しく思えるようになった。半世紀の活動を経て、未だに充実した新譜を作っているのは素晴らしいよね。

ドキュメンタリー映画ということですっかり油断していたようで、最後に悲鳴をあげてしまった。映画館で観てないでよかった。

さがす(公式サイトNetflix

事前に予想していたのと少し違い、うーん、こんな風に主人公が犯罪(中略)する映画なんだと意外だった。うーん。

主人公の娘役を演じる伊東蒼が良かったと思います。

ポップスが最高に輝いた夜(Netflix

"We Are The World" については、西寺郷太『ウィ・アー・ザ・ワールドの呪い』の読書記録も書いているが、80年代に少年時代を過ごし、洋楽を享受していた人間として、これは無視できなかった。

やはり、かなりキリキリくる現場だったんだな。「部屋に入る時点でエゴを置いて」という標語があったのは知られるが、ケニー・ロギンスがそのあたりについて冷静な指摘をしていて、そりゃ、そうだよね。

プリンスの代役のソロパートを振られたヒューイ・ルイスが、プレッシャーを感じて本当に緊張していたのが伝わって驚いた(当時、彼がソロをとるのを不思議とまったく思ってなかったので)。そして、プリンス絡みでは、この日のシーラEの話は既に日本のテレビ番組で取り上げられていたので知ってはいたが、最後のコメントに胸が締め付けられた。


アンチソーシャル・ネットワーク: 現実と妄想が交錯する世界(Netflix

2003年に誕生した匿名掲示4chan についてのドキュメンタリー映画4chan がふたばちゃんねるのスクリプトを流用したことはよく知られているが、日本との関わりについてはマット・アルトが狂言回しの役割を務めていて、2ちゃんねるとふたばちゃんねるを混同しているところがあるが、これは話を分かりやすくするためだろう。

ミームで悪ふざけして遊ぶ場だった 4chan から Anonumous が生まれ、サイエントロジーにケンカうったり、ウォール街占拠デモにつながるなど社会性が出てくるも、逮捕者を出す挫折があり、その後ゲーマーゲート騒動などあって創始者moot は引退し、その後はQアノンなどシャレにならない場になって……というストーリーが語られている。

しかし、そのように 4chan はカルチャー的にも日本とのつながりがあり、現在の所有者は2ちゃんねる創始者である西村博之なのに、最初のほうで映像が少し引用されるだけで、その後彼についてまったく言及されないのが謎だった。


フォードvsフェラーリNetflix

これ映画館で観たかったのだけど、都合が悪かったか、行けなかったんだよなー、と Netflix に入ったのを知って鑑賞させてもらった。ジェームズ・マンゴールドの作品を観るのは『LOGAN/ローガン』以来か。

やはり、クリスチャン・ベールは素晴らしい俳優だよな。彼の妻役のカトリーナ・バルフも良かった。まさに手に汗握る作品なのだけど、やはり、こういうのは家のテレビでなく映画館で観るべきだよな、と今更当たり前なことも痛感してしまった。

ブラックベリーNetflix

KingInK で面白いという話を小耳に挟んだので、これも Netflix に入るなり鑑賞。ブラックベリーの端末は、本業のテストで少し触ったくらいで、製品には何の思い入れもない。が、本作はオタクたちのテック企業奮闘記で面白かった。

Research in Motion(RIM)の CEO のマイクと彼の片腕のダグがダメダメな売り込みをやるところから始まるが、マイクが中国製の電話が出すホワイトノイズがどうしても気になって、プレゼンの直前にそれを直そうとするところがマイクの人となりを語っていてうまかった。スーツ着てもヘアバンドしているダグもいかにもらしい役なのだけど、この映画の監督、脚本の人が演じてるのか。

そのプレゼンを持ち込まれた側のジムが RIM に乗り込んできて、強引で攻撃的なビジネスマンぶりを発揮するところもいかにもらしい。ジムのビジネスマンぶりがだんだんとマンガ的になってくるので、映画のために創造されたキャラクターなのかと思ったら、実在するんだな。

スマートフォン市場のトップランナーだった RIM だが、2007年に AppleiPhone を発売するとあっという間に没落してしまう。2007年初頭の Macworld Expo 2007 におけるスティーブ・ジョブズによる iPhone のプレゼンは、ワタシの人生で見たもっとも素晴らしいプレゼンであるとともに、ワタシこれからどうなっちゃうんだと深甚な恐怖を覚えたのを思い出したりもした。この映画で描かれる RIM のズルズルの転落加減にも味わい深いものがあった。

映画の最後、深圳で製造されたブラックベリーの新機種を前にしてマイクが、無駄だと分かっていてもやる行為が、映画の冒頭につながってなんともいいんですよ。そこにかぶさる後日談が実に絶望的なのだが、ダグの後日談には思わず声をあげてしまった。

スティルウォーター(公式ページNetflix

これも公開時逃していたんだよな。いつか観ようと思っていたら、Netflix の配信が終了と知って慌てて鑑賞。トム・マッカーシーの作品を観るのは『扉をたたく人』以来だから、およそ15年ぶりか!

明らかにアマンダ・ノックスの事件に着想をえたストーリーだが、主人公を演じるマット・デイモンが実に良い。ワタシはデビュー以来天才役ばかり演じる彼のことが好きになれなかったが、こういう保守的で田舎生まれで地に足のついた、でも、間違いも犯すしダメなところもあり、なんともめぐり合わせの悪い肉体労働者の主人公を演じられるまでになった。

主人公は娘が収監されているフランスに渡り、マルセイユで娘の無実を証明するため、真犯人を探し出そうとする話になるので、なんで映画のタイトルが『スティルウォーター』なん? と不思議に思っていたら……これはおそるべき傑作だった。

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