当ブログは YAMDAS Project の更新履歴ページです。2019年よりはてなブログに移転しました。

Twitter はてなアンテナに追加 Feedlyに登録 RSS

『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』特別版がSTORES.jpで人気アイテム入り

わざわざ更新するほどのことでもないのだが、高橋さんのツイートを見て驚いた。

マジかよ、と思ったら本当だった。

だからどうしたという話ではあるのだが、自分の作品がこういう人気アイテムのトップにくることなど最初で最後だろうから、少し自慢させてください。

瞬間風速だということは分かっているが、何より『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』特別版を購入いただいた方に感謝します。

それでは電子書籍版『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』のほうもよろしくお願いします。

そうそう、上でリンクしたサポートページに特別版の情報を追加させてもらった。

幻の遺作がNetflixで公開間近なオーソン・ウェルズの映画を観たいのに観れない状況は2018年現在変わったか?

オーソン・ウェルズの幻の遺作『風の向こうへThe Other Side of the Wind)』が11月2日に Netflix で配信開始とのこと。

さて、ワタシは2010年に「オーソン・ウェルズの映画が観たい(のに観れない!)」というエントリを書いたことがある。オーソン・ウェルズの映画は、当時 DVD で入手できなかったものが少なからずあるという話だった。

あれから8年以上経ち、状況はどのように変わったか再度調べてみた。

市民ケーン(1941)

これはさすがに新品を入手可能で、廉価版の DVD もある。

偉大なるアンバーソン家の人々(1942)

こちらも新品を入手可能で、ここではリンクしていないが、通常盤の Blu-ray も DVD も定価より大幅に値引きされている。

しかし、148分のオリジナル版、あるいは131分のプレビュー版のディスク化はやはり不可能なのだろうか。

オーソン・ウェルズ In ストレンジャー(1946)

2007年に出た廉価版 DVD が現在も入手可能で、Netflix でも配信中である。

そういえば、幻の遺作『風の向こうへ』で主演のジョン・ヒューストンは、この映画の脚本でウェルズと既に仕事していたんだね。

上海から来た女(1947)

上海から来た女 [DVD]

上海から来た女 [DVD]

近年再リリースされた DVD が現在も入手可能である。

マクベス(1948)

シェイクスピア 映画大全集 DVD10枚組 BCP-057

シェイクスピア 映画大全集 DVD10枚組 BCP-057

残念ながら単独では DVD 化されていないが、シェイクスピア映画大全集という DVD 10枚組に収録されており、現在も入手可能である。10枚組と聞くと身構えるが、ありがたいことに値段はかなり安い。

オセロ(1952)

シェイクスピア 映画大全集 DVD10枚組 BCP-057

シェイクスピア 映画大全集 DVD10枚組 BCP-057

これも『マクベス』同様、シェイクスピア映画大全集に収録されている。この DVD 10枚組は、他に収録されているのもローレンス・オリヴィエ監督、主演の名作とされているものなので、かなりお得なのではないか。

秘められた過去(1955)

残念なことに、この作品だけは現在も日本では DVD 化されていない。元々は『アーカディン/秘密調査報告書』というタイトルだったようだ。

黒い罠(1958)

修復版がフィルムノワールの傑作という評価を確かにしており、現在も入手可能である。Netflix でも配信中

審判(1963)

審判 Blu-ray

審判 Blu-ray

近年再リリースされた Blu-ray/DVD が現在も入手可能である。

フォルスタッフ(1966)

こちらも近年再リリースされた Blu-ray/DVD が現在も入手可能。

フェイク(1974)

オーソン・ウェルズのフェイク [DVD]

オーソン・ウェルズのフェイク [DVD]

昨年再リリースされた DVD が現在も入手可能だが、なぜかは分からないが、2018年末にも再リリース(asin:B07J3H7FB3)されるようだ。

さて、オーソン・ウェルズの映画は現在までに一作をのぞいてすべて Blu-ray か DVD の新品が入手できるようになっている。また Netflix で配信されている作品もわずかながらある。

とてもありがたいことだと思うが、一方で彼の映画を観ていない言い訳ができなくなったとも言えるかもしれない(笑)。

とりあえず、ワタシは11月に入ったら『風の向こうへ』を Netflix で観るつもりである。

ブルース・シュナイアーが説くコンピュータセキュリティに関する6つの教訓

Slashdot 経由で知ったブルース・シュナイアー先生のニューヨークタイムズへの寄稿文だが、「すべてがコンピュータになる未来は、あなたが恐れる通りゾッとするものになるよ」とのことで、つまりは IoT(モノのインターネット)に対する警告ですね。

ただ、シュナイアー先生は IoT という言葉よりも「インターネット+」という表現のほうを好んでいる。

最近シュナイアー先生の寄稿やインタビューや講演について聞くことが多いのは、邦訳の刊行が期待される洋書を紹介しまくることにする(2018年版)でも紹介した新刊 Click Here to Kill Everybody が発売になったということですね。

Click Here to Kill Everybody: Security and Survival in a Hyper-Connected World

Click Here to Kill Everybody: Security and Survival in a Hyper-Connected World

個人的に面白かったのは、Google での講演。

開口一番、「私が初めてつけた釣りタイトル(clickbait title)」と書名を紹介していて笑ってしまった。

この講演でも語るのは、「すべてがコンピュータになる世界」であり、「インターネット+」の話である。

その上で、コンピュータセキュリティに関する6つの教訓を語っている。

  1. 大抵のソフトウェアは不完全に実装されており、安全でない
  2. インターネットは元々セキュリティを考慮して設計されていない
  3. コンピュータ化されたシステムの拡張性は、我々に不利な形に利用されうる
  4. コンピュータの複雑さゆえ、攻撃のほうが防御よりたやすい
  5. コンピュータが相互接続することで新たな脆弱性が生まれる
  6. 攻撃は常に上達する。攻撃は常により容易に、より高速に、より安価になる

要はコンピュータセキュリティは難しく、不断の努力がいるということですね。何を今更と言う人もいるだろうが、IoT あらため「インターネット+」を考える上でこの前提は欠かせないということでしょう。

来年あたり、この新刊の邦訳が出てくれるかねぇ。

ゼイナップ・トゥフェックチー『ツイッターと催涙ガス ネット時代の政治運動における強さと脆さ』邦訳刊行を喜ぶ

先日、大久保潤さんから連絡をいただき、ゼイナップ・トゥフェックチー『ツイッターと催涙ガス ネット時代の政治運動における強さと脆さ』の刊行を教えてもらった。

ツイッターと催涙ガス ネット時代の政治運動における強さと脆さ (ele-king books)

ツイッターと催涙ガス ネット時代の政治運動における強さと脆さ (ele-king books)

ゼイナップ・トゥフェックチー(Zeynep Tufekci)の本は、BackChannelチームが選出した2017年最高のテック系書籍11選で取り上げたし、その後も「ネット広告から権力者による監視まで〜AIのアルゴリズムが導くディストピアへの道」でも彼女の講演を取り上げている。

junne さんによると、ワタシの文章を読んで邦訳を企画したとのことで、もちろんワタシのブログエントリなど契機の一つに過ぎないとは分かっていても、そう言っていただけるだけで嬉しいことこの上ない。

正直邦訳自体難しいと思っていたところに、下手に邦題を無理やりキャッチ―なものにすることなく、ちょっと物騒な原題をほぼそのまま直訳しているところにこれに携わった人たちの真摯さを見る気がする。

ゼイナップ・トゥフェックチー(紹介する文章ごとに名前の日本語表記が微妙に違っていたが、これで定着かな?)は重要な論者だと思うし、何よりこの『ツイッター催涙ガス』は、それこそ2010年代はじめに出た安易なネットによる動員論を徹底的に更新するものである。

ちょうど恵贈いただいた本書を読み始めたところなのだが、二段組のこの本をよくぞ邦訳出版してくれたと感謝したくなる多層的な本である。

技術書典5で販売した『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』特別版の取り扱いをBooth.pmでも開始

技術書典5において、達人出版会ブースで販売した『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』の特別版について、Booth.pm の達人出版会BOOTH支店でも取り扱いを開始した。

経緯については23日に書いた通りである。こちらのほうが達人出版会STORES支店より安そうだが、それは送料別のためらしく、結果的には STORES.jp のほうが安くなるらしい。ユーザの利用環境で都合がよいほうを選んでいただけると幸いである。

7月22日

ポール・グリーングラスの新作が Netflix で配信という話はこないだ書いたが、早速観たので新作映画として感想を書いておく。

ご存知の通り、本作は2011年に起きたノルウェー連続テロ事件を題材とするものである。

この監督の作品らしく、冒頭から政府庁舎爆破、そしてウトヤ島における銃乱射を淡々と描いていく。『ブラディ・サンデー』のような映画になるのかなと思っていたのだが、犯人のアンネシュ・ベーリング・ブレイビクが69人を射殺後逮捕されるまでが143分の上映時間の最初の30分で、そこからほぼ映画一本分の時間になる。

つまり本作は、「7月22日」そのものというよりは「7月22日の後」を主に描いた映画なのである。テロ実行の描写も怖いのだが、主眼はその後にある。

犯人のアンネシュ・ベーリング・ブレイビクの不敵さが予想通り印象的だったが、彼から指名されたために脅迫を受けながら彼の弁護をする羽目になる人権派の弁護士をはじめ、この事件はいろんな人の人生を大きく揺るがす。その最たるものが事件の被害者なのは言うまでもないが、五発の銃弾を受け、脳に銃の破片が残ったままになってしまう被害者ビリヤルの苦悩が特に心を震わせる。彼がウトヤ島で語った多様性の重視は犯人の銃弾により蹂躙されてしまう。その彼が現実に立ち向かい、なんとか犯人に一矢を報いようとする姿にワタシは涙を流した。ポール・グリーングラスの映画を観て泣く日が来るとは……。

さて、ここから映画本体の感想から少し離れた話、主に Netflix Japan への文句を書かせてもらう。

本作において、ビリヤルと同じく事件の被害者である少女が物語上重要な役割を果たすのだが、彼女は事件で姉妹を亡くしている。

さて、「姉妹」と書くと、二人以上亡くしたと思わない? でも、実際には一人なのである。

どういうことかというと、英語の台詞では sister としか言わないのを律儀に「姉妹」と訳され続けるためである。しかし、おそらく彼女も実在の人物がモデルだろうから、亡くなったのが「姉」か「妹」かは調べればすぐに分かるのではないか。それぐらいのリサーチを Netflix Japan の字幕制作者に求めるのは過度の期待だろうか?(以上について、ワタシが勘違いしていたら申し訳ない)

Netflix Japan については、宇野維正さんの苦言に乗っかる形で文句を書かせてもらっているが、ネット企業なのに SNS 利用が微妙なのはなんでだろう?

映画ポスターのデザインの変遷から映画産業の発展の歴史をひも解く本が面白そうだ

株式会社トランネットのオーディション課題に面白そうな本があがっている。

Selling the Movie: The Art of the Film Poster

Selling the Movie: The Art of the Film Poster

世界の映画産業の発展は、映画の宣伝用ポスター抜きには語れない。最初にハリウッドに映画スタジオが誕生した映画創成期の1910年代から2000年代までを年代順に10年ごとに区切り、創造的かつ商業的な観点から各国の映画ポスターを紹介する。ポスターのデザイナー、スタイルの変遷、政治とイデオロギーの影響、商業がポスターの発展に果たした役割など、ポスターを通して様々な面から映画産業の歴史をひも解く一冊。

オーディション課題概要

洋画のポスターが日本版はデザイン変えすぎ話は定期的で映画ファンの間で話題になるが、映画のポスターというのは、この本の原題にあるように、何より映画を売り込むためのものであり、それがどのように発展変化してきたかというのは興味深い題材である。来年には邦訳が出そうなので楽しみである。

著者の Ian Haydn Smith という人は知らなかったが、かの 1001 Movies You Must See Before You Die の第7版(asin:1438050062)の編集もやってる人ということは、映画の分野でそれなりに信頼のおける人なのだろう。

3年前に紹介したドローン本の邦訳『ドローンの哲学 遠隔テクノロジーと〈無人化〉する戦争』が出ていた

この記事を見て驚いた。今からおよそ3年前に『The Black Box Society』の著者が勧めるドローン本が気になると紹介したドローン本の邦訳が7月に出ているのを知った。

ドローンの哲学――遠隔テクノロジーと〈無人化〉する戦争

ドローンの哲学――遠隔テクノロジーと〈無人化〉する戦争

原書が出てから結構経つので邦訳はもう無理かと思っていたが、「日本ではじめての《ドローンを「哲学」する》本」という宣伝文句を持つユニークな本は、そう簡単には古びないということか。

版元である明石書店のページを見ると、新聞にも複数書評が出ている。

イカームーブメントの文脈でドローンに注目が集まった時期があるが、これはそうした視点の本とは一線を画すもので、ドローンがもたらす戦争の変容を扱っているのだからなかなかハードである。

アメリカ国立標準技術研究所による「本当にブロックチェーンを使うべきか」チャート

ブロックチェーンを使うべきかどうか判定するチャートで、面白いものを作る人もいたもんだと思ったら、これアメリカ国立標準技術研究所(NIST)が公開している Blockchain Technology Overview の42ページからの抜粋なんですな。

NIST がこんな文書を公開してたのか! しかし、このチャートは、ブロックチェーンがやたらといろんな分野や用途で引き合いに出されるのに対する、本当にそれにブロックチェーン使う必要あるか? という警鐘なんでしょうね。

さて、NIST によれば、以下の6つの質問にすべて Yes でないとブロックチェーンを使うべきではないとのこと。

  • 一貫した共有データ格納が必要か?
  • 二つ以上の実体がデータを提供する必要がある?
  • データ記録は、一度書き込まれれば、更新されたり削除されることはない?
  • 機密の識別子がデータ格納に書き込まれることは絶対ない?
  • 書き込みアクセス権のある実体は、誰がデータ格納を管理すべきか決めるのに苦労している?
  • データ格納へのすべての書き込みの不正開封防止ログが欲しい?

NIST の文書全体を読んでないので、訳がおかしかったらごめんなさい。以上の質問について、No の場合にどのソリューションがよいかは原文を読んでくだされ。

「ブロックチェーン信仰」が揺らぎ始めたとか日本では「ブロックチェーン」は過度な期待とかいろいろ言われているが、過度に期待して合ってない用途に使ってもそりゃ幻滅するよね。

ネタ元は Four short links

ブロックチェーン技術の未解決問題

ブロックチェーン技術の未解決問題

技術書典5で販売された『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』特別版の販売をSTORES.jpで開始

技術書典5において、達人出版会ブース『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』の特別版を販売した件については既にお伝えしている(その1その2)。

その特別版だが、STORES.jp の達人出版会STORES支店で取り扱いを開始したので、ここでも告知させてもらう。高橋さんによると、達人出版会STORES支店はもう少し修正が加わる見込みとのこと。

まぁ、このように紙書籍版の販売をできるということは、つまりは、技術書典5において完売しなかったということでもある。そうした意味で、高橋さんに大変申し訳ないので、紙版を手元に欲しい方で技術書典に参加できなかった方は、これを機会に買ってもらえると大変ありがたいです。

実は、既に Booth.pm での販売を準備していて、一週間前からそれに合わせてブログを更新できるようにしていたのだが、いつまで経っても準備中のままなので、カッとなって(?)STORES.jp での取り扱いを始めたとのこと。Booth.pm での取り扱いを開始したら、またこちらでも告知させてもらう。

ポール・グリーングラスが2011年のノルウェー連続テロ事件(とその後)を描く『7月22日』が10月10日にNetflixで配信開始

『ブラディ・サンデー』『ユナイテッド93』、そして『キャプテン・フィリップス』とずっとポール・グリーングラスの映画を観てきたが、正直この人の映像作品は必ずしも好みでなかったりする。

が、町山智浩さんの紹介で彼の新作が、2011年のノルウェー連続テロ事件を題材にしたものと聞いて、これは彼向きの題材だと思ったので興味が湧いた。

Netflix 製作とのことだが、たまむすびでは町山さんは公開日を明言してなかったが、Netflix のページを観ると、10月10日配信開始とあるではないか!

なんか映画の世界も、いきなりニューアルバムをミュージシャンが自らの SNS 上のアナウンスし、ストリーミングサービスで配信開始という音楽の世界に近づいているのだろうか。

ヴェルヴェット・アンダーグラウンド展「The Velvet Underground Experience」が今月より開催&ニコの晩年を描く映画『Nico, 1988』

調べものをしていて、The Velvet Underground Experience のことを知ったのだが、今月10日よりニューヨークのブロードウェイでヴェルヴェット・アンダーグラウンドの回顧展があるとのこと。

調べてみたら、NME Japan に「ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、ニューヨークで展覧会が開催されることが明らかに」という記事が出ていた。

ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのウェブサイトによれば、展覧会では「6つの映像作品と350枚以上の写真、1000以上の品々、アンディ・ウォーホルによってデザインされたバナナのアートワークの世界観をVRで体験することのできる特設スペース」を楽しむことができるという。

また、展覧会の開催期間中には「コンサートや特別な催し、レクチャー、ポップアップ・インスタレーション、ファッションとのコラボレーション、芸術作品の展示、上映会、パフォーマンス、講習会」なども開催されるという。

ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、ニューヨークで展覧会が開催されることが明らかに | NME Japan

これは見たいな……さすがに日本までは来ないだろうし。

そういえば、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド関連のニュースというと、ニコの晩年を描いた Nico, 1988 という映画が作られており、批評家の評価は高いようだ。こちらは日本公開されるかなぁ。

それにしても、ニコが死んで30年になるんだな。

Velvet Underground & Nico-45th Anniversary

Velvet Underground & Nico-45th Anniversary

Gamergateの被害者にもなったフェミニストメディア批評家が、これまで語られてこなかった25人のたぐいまれな女性たちを描く新刊『History Vs Women』

調べものをしていて、Anita Sarkeesian の新刊が今日発売になるのを知る。

History vs Women: The Defiant Lives That They Don't Want You to Know

History vs Women: The Defiant Lives That They Don't Want You to Know

History vs Women: The Defiant Lives that They Don't Want You to Know (English Edition)

History vs Women: The Defiant Lives that They Don't Want You to Know (English Edition)

Anita Sarkeesian は、フェミニストの立場からゲームに登場する女性キャラはいかにして性の対象として描かれているかを論じてきたメディア批評家で、その流れで Gamergate 事件に巻き込まれてしまう。

Gamergate については、ワタシも「邪悪なものが勝利する世界において」で少し触れているが、事件についてのもうちょっと詳しい話は、八田真行の「オルタナ右翼とゲーマーゲートの関係」を読むのがよいだろう。

その Anita Sarkeesian の新刊(共著)は、これまで語られてこなかった25人のたぐいまれな女性たちについて書くものとのこと。タイトルは、女性が歴史の中で過小評価されてきたことへの反抗なのだろう。

今年『世界を変えた50人の女性科学者たち』(asin:442240038X)という趣旨が近い本の邦訳が出ているが、『History Vs Women』のほうは対象は科学者に限らない。25人の中に "Japanese novelists" が入っているようだが誰だろう。樋口一葉

このエントリを書くために調べていて、Anita Sarkeesian と同じく Gamergate の被害者だった Zoe Quinn も昨年本を出しているんだね。これは完全に見逃していた。

Crash Override: How Gamergate (Nearly) Destroyed My Life, and How We Can Win the Fight Against Online Hate

Crash Override: How Gamergate (Nearly) Destroyed My Life, and How We Can Win the Fight Against Online Hate

「いかにして Gamergate が私の人生を(ほぼ)破壊したか、そして私たちはいかにしてオンラインヘイトとの戦いに勝利できるか」という副題がすべてを物語っている感じですね。

ジェイミー・バートレット『The People Vs Tech』の邦訳『操られる民主主義: デジタル・テクノロジーはいかにして社会を破壊するか』が出ていた

あたたたた、ジェイミー・バートレットの『The People Vs Tech』は、「邦訳の刊行が期待される洋書を紹介しまくることにする(2018年版)」でも取り上げており、くだんの「インターネット、プラットフォーマー、政府、 ネット原住民」の中でも引き合いに出していたのだが、邦訳『操られる民主主義』が先月に出ていたのか。

操られる民主主義: デジタル・テクノロジーはいかにして社会を破壊するか

操られる民主主義: デジタル・テクノロジーはいかにして社会を破壊するか

「インターネット、プラットフォーマー、政府、 ネット原住民」で原書をリンクしちゃったのは痛恨である。一応調べたはずなのに。

原書が出たのが今年4月で、それから半年も経たずに翻訳が出たのはかなり早い部類ではないか。版元の草思社も、これは売れると踏んだのだろう。

「技術書典5」で販売される『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』特別版に収録される書き下ろし技術コラム「インターネット、プラットフォーマー、政府、 ネット原住民」について

10月8日に開催される技術書オンリーイベント「技術書典5」において、達人出版会ブースにて、『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』の特別版を販売すること、そしてそれに新作技術コラム「インターネット、プラットフォーマー、政府、 ネット原住民」を収録することは昨日書いた

その「インターネット、プラットフォーマー、政府、 ネット原住民」だが、このケッタイなタイトルは、映画『裏切りのサーカス』の原作であるジョン・ル・カレ『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』のもじりである……って、どこがや!

なかなかタイトルが決まらず難儀し、高橋征義さんが「プラットフォーマー・政府・ネット原住民 地球最大の決戦」というタイトルを提案したのはここだけのヒミツである。

さて、今回の文章を書くきっかけとなったのは、今年の8月に某社の編集者より『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』を基にした書籍の執筆について打診されたことだったりする。

正直、ワタシはそのプランに懐疑的だったのだが、編集者とやりとりをするうちにワタシも徐々に乗り気になり、だったらこの2年間のフォローアップとなる新作文章を書かなければならないな、と実に2年ぶりに技術コラムを書く気になったのである。

昨年『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』の電子書籍化の作業をしながら、そうした文章を書く気にはまったくなれなくて、書いたのはボーナストラック「グッドバイ・ルック」だけだった。

それはともかく、ワタシが久方ぶりにやる気になったのに、その直後からくだんの編集者からのメールがぱったりなくなった。まぁ、正直企画会議を通るとは思わなかったので別にいいのだけど、ダメならダメでその旨をメールで伝えるくらいしてもいいのではないか。

この編集者が属する出版社については、武士の情けで名前は特に秘すが、翔泳社である。

さて、せっかく2年ぶりに技術コラムを書く気になっていたのに、それを発表する場がなくなって困っていたところ、達人出版会高橋征義さんから声をかけていただき、「技術書典5」で販売される特別版に収録することになったという次第である。

しかし、高橋さんもこんな常軌を逸した長さの文章を送りつけられるとは思ってなかったのではないか。一年前に原稿用紙換算で150枚超の「グッドバイ・ルック」をいきなり送りつけられたときほどではないにしろ、ため息の一つでもつかせてしまったかもしれない。

それくらい長くなったのは、何よりこの2年間を埋めるためというのが一番で、とにかく書きたい話はすべて詰め込んだ結果である……のだけど、それでも書き残した話に後になって気付くのだから困ったものである。

一つは「監視資本主義(surveillance capitalism)」というタームについて入れるつもりだったのに入れ損ねた。この言葉については以前にも触れたことがあるが、この言葉の発明者であるハーバードビジネススクールの元教授 Shoshana Zuboff のこの言葉を書名にした本が出ることについて触れるべきだった。

The Age of Surveillance Capitalism: The Fight for a Human Future at the New Frontier of Power

The Age of Surveillance Capitalism: The Fight for a Human Future at the New Frontier of Power

もう一つは GDPR について、ニコラス・カーの「EUGDPRGoogleFacebook に縛りたいのだろうが、これに本格的に対応する人的リソースを持つ GoogleFacebook の監視資本主義の強化にしかつながらないだろうよ。残念!」という見立てを入れ込むのを忘れていた。

あと、この文章は冒頭で知的財産戦略本部の検討会議について書いているが、中間とりまとめができず延長になったのはご存知の通りだが、それより前に脱稿したので、話がその前までとなっている。またそれと関連して、中国のようなネット監視についても触れているが、Googleエリック・シュミット元 CEO が「今後は中国とそれ以外の2つのインターネットが存在するようになる」と語った話も入れきれなかった。

あと decentralized なウェブを目指す動きとして、ちょうどティム・バーナーズ=リーが手がける Solid がニュースになっているが、これも前から知っていたのに入れきれなかった。

それでもとにかく長い文章になってしまったのだけど、「インターネット、プラットフォーマー、政府、 ネット原住民」で書いたことと似たことを、ワタシと同い年の中川淳一郎さんが「ブログやSNSは“ネットの空気”をどう変えたのか? 平成最後の夏、「ネット老人会」中川淳一郎が振り返る」で書いている(実は先月、とある追悼会で中川さんをお見かけしているが、ワタシのことなんか知らんだろうな、と弱気になってしまい声をかけられなかった)。

そうなのだ、本稿冒頭で「インターネット老人会」と述べたが、ネットを特別視すること自体がオッサン・オバサンの表れなのかもしれない。若者はもはやインターネットもリアルも同じものと捉え、水道や電気、ガスと同様の扱いをしもはやネットに夢は求めていない。

ブログやSNSは“ネットの空気”をどう変えたのか? 平成最後の夏、「ネット老人会」中川淳一郎が振り返る (3/3) - ねとらぼ

それでは「技術書典5」にお越しの方は、どうか達人出版会ブースで『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』特別版をよろしくお願いします。

[YAMDAS Projectトップページ]


クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
YAMDAS現更新履歴のテキストは、クリエイティブ・コモンズ 表示 - 非営利 - 継承 4.0 国際 ライセンスの下に提供されています。

Copyright (c) 2003-2023 yomoyomo (E-mail: ymgrtq at yamdas dot org)