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ルー・リードのライブに行ってきた

彼のライブに行くのは三度目だが、今回はバンドがドラムレスで、チェロとボーカルがいるという変則的な構成だったので正直不安だったのだが、まあ杞憂だったかな(←このように「だった」が続く文章はよくありません)。ひょっとしてアンプラグドかと思っていたら、全然エレクトリックだったし。

基本的にルー・リードが好き勝手やりたいがためのフォーマットだということだろう。一曲目のおなじみ "Sweet Jane" の不滅のフレーズにしびれていると、「Anyway, こないだ日本人のジャーナリストが電話してきたんだけどよ…」といきなり演奏を止めて喋りに入ったり、とか。"How do you think it feels?" をフェルナンド・サンダースとアレックス君に歌わせておいて、いきなり規定外の音量でギターソロ(というかギターノイズですな)を鳴らしまくるなど性格の悪さは健在だった。

そうした好き勝手モードのルー親父を主にサポートするのがギターシンセを駆使して律儀にピアノなどの音を再現するマイク・ラスケであり、曲によってはシンセドラムまで叩くフェルナンド・サンダースだったわけだが、マイク・ラスケはギターをちゃんと弾ける曲のほうが明らかに気持ち良さげでノリが良く、「おっ、お前のギターからキーボードが鳴っているな。ちょっと立ってみてくれ」などというボケをかますルー親父にいささか複雑な心境になった。逆にいえば、二人のギターががっぷり四つを組む "Dirty Blvd." は圧倒的だったわけだが。

rockin' on 10月号のインタビューで、デビッド・ボウイは最近観たルーのライブを激賞していたが、ボウイが言うようにルーの存在が一回り大きく感じられるライブだったかというと疑問が残る。前作「エクスタシー」時のツアーにおける、ギターノイズの洪水に浮かび上がるルー親父の圧倒的な存在感に匹敵するものは残念ながらなかった。というか、リラックスし過ぎ。ラストの「ワイルドサイドを歩け」なんて和気あいあいといった感じだったしな。それはそれで良いんだけど、ルー・リードにはギターの一音で人を刺し殺すような緊張感を求めてしまうわけですよ。

しかし、今回のツアーならではの楽しみもあった。それは「ベルリン」からの曲に代表されるような滅多にライブでやらない曲が多数セットリストに含まれていたため、作曲家としてのルー・リードの素晴らしさを再確認できたことである。また前述の "Sweet Jane" や "Dirty Blvd." に代表されるように、ギタリストとしての偉大さ(もちろんプレイヤーとしての達者さではなく、ソングライティングの一部としての)もよく分かった。Rolling Stone 誌における "The 100 Greatest Guitarists of All Time" でルーは52位に入っていたが、ギターヒーロータイプでない彼がこの位置に入っているということは、やはりそこらへんを分かっている人もいるということなのだろう。

…という感じで締めたいのだが、何か書き忘れているような…でもあまり書きたくないような……ああ、太極拳! えーとですね、まさかルー・リードのライブで太極拳見るとは思いませんでした。まぁ…この煮え切らない書き方からどういうものだったか察していただければ…

あ、これを KEEPERS のコラムにすればよかったか。あの連載は…

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