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24アワー・パーティ・ピープル

DVDジャケット

そもそもこの映画に興味を示す人は、少なくとも日本人では限られるし(まあ、ワタシは、一瞬でてきたマークと呼ばれる男を見て、マーク・E・スミス! と喜んじゃう人間だったりするのだが)、その中でも好き嫌いがはっきり分かれる映画だと思うが、ワタシは楽しんで観れた。

別にこの映画をロック映画の傑作、とか言いたいわけではない。一方で、主人公のトニー・ウィルソン役が画面に向かって喋り出すメタな演出をけなすのも芸がない。だってこれはそういう映画なのだ。自尊心が強く、教養主義者であるトニー・ウィルソンが、とにかく先回りして執拗に「語る」映画だからだ。さらにいえば説明の映画ということである。

だからファクトリー・レーベルを代表するニューオーダーについての場面が意外にさっぱりしており、一方でハッピー・マンデーズ、というよりもショーン・ライダーの本当にとんでもないロクデナシぶりが映画をかき乱すのもよく分かる。トニー・ウィルソンが求めてやまなかったものを象徴するのは、ニューオーダーよりもその前身であるジョイ・ディヴィジョンイアン・カーティスであり、その後は本作の題名となる曲を生み出したマンデーズのショーン・ライダーだということなのだろう。

そして、トニー・ウィルソンは、契約とは呼べないような理想主義的な関係をバンドと結ぼうとしながら、結局のところ彼らからそんなに愛されなかった(ニューオーダーのスティーヴン・モリスによると、ファクトリー後期の頃、トニー・ウィルソンの名前はバンド内で禁句だったそうだ)。彼は、多くの人から尊敬され、愛されたクリエイションのアラン・マッギーやミュートの人(名前失念)にはなれなかった。しかし、本作はそういう人間が主人公だからこその面白さがある。

付け加えておくと、ヴィニー・ライリーについてのつくづく悲しい描写もなんともよかった。

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