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本作はアメリカではじめて同性愛者であることを公言して公職(サンフランシスコの市政委員)についたハーヴェイ・ミルクの伝記映画である。
おそらくはガス・ヴァン・サントにとって映画化を熱望してきた題材だろうし、同時に絶対に失敗することのできない題材でもあったと思う。
本作はすごくオーソドックスな作りになっている。ハーヴェイ・ミルクはオペラのファンであり本作でもオペラが多用されているのが象徴的で、もちろん70年代のポップミュージックも使われてはいるが、本作は非ポップな作りの映画とも言える。
サンフランシスコというと、ヴィレッジ・ピープルの "Go West" を引き合いに出すまでもなくゲイに寛容な地域というイメージがあったのだが、70年代のサンフランシスコでもこれほどゲイが迫害されてたとは不明にも知らなかった。
ショーン・ペンは、ただ理想にまい進するだけでなくプラクティカルな面ももつ魅力的なゲイの活動家を見事に演じていて、さすがだと思った。
政治活動に入れ込むあまりミルクの元から恋人たちが去っていくことも本作には描かれるが、その一人であるスコットと早朝電話で話す場面は何とも儚い。
その日ミルクがダン・ホワイトの銃弾に倒れるとき、観客は本作がミルクの30代最後の日にはじまり、10年足らずの物語であることに気付きはっとする。30代最後の日に「人生を変えたい」と願い、たった10年足らずで彼をそれを成し遂げた。
本作のラストは必然的に悲劇で終わるが、本作全体から受ける印象は暗くない。それは本作にはマイノリティであるために被る非合理な扱いや恐怖も描かれるが、それ以上に主人公がマイノリティにとっての希望を体現しているからだろう。
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