- 出版社/メーカー: メディアファクトリー
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正直ダニー・ボイルはもう終わったんじゃないかと思っていた。
鮮烈な『トレインスポッティング』で一躍時の人になったものの、『ザ・ビーチ』が決定的にダメだったためにハリウッド進出に失敗し、その後は迷走といったイメージがあった(ゾンビ映画の『28日後...』は面白いらしいが未見)。その彼がインドで映画を撮ると聞いたとき、正直「都落ち」という言葉が浮かんだくらいである。
この印象は、ワタシがインド映画に興味がなかったせいもある。『ムトゥ 踊るマハラジャ』以降日本でもインド映画が話題になっが、ワタシはそれを完全にスルーしてしまったので。
それがどうだ。この怒涛のエンターテイメント大会は。
少年時代の主人公たちが縦横無尽に走りまくり、カメラがダン、ダン、ダンとボンベイ(後のムンバイ)の街を映し出す冒頭からゾクゾクくる。
物語自体は割とシンプルな純愛ものだが、『クイズ$ミリオネア』というテレビ番組の組み込み方が巧みで、分かっちゃいても盛り上がる。
本作を「インドをリアルに切り取った映画」みたいに評するのは間違っている。『トレインスポッティング』が一種のファンタジーであったように(ボビー・ギレスピー曰く「ヘロインの禁断症状はあんな甘いものじゃない」)、主人公の過去とクイズとの符合はむしろほら話的で、それがむしろ映画的高揚につながっている。
そして何より猥雑なムンバイの街。主人公の兄は街を見下ろしながら「今ではここが世界の中心だ」と言うが、ダニー・ボイルは貧困と急成長がないまぜのムンバイの街を題材として、いかにも彼らしい想像力の羽の伸ばし方でこの疾走感溢れる映画をものにした。