Long Now 財団のブログを読んで、カリフォルニア工科大学において「ファインマンのヴィジョン:次の50年」と題した TEDxCaltech が今年1月に開催されていたのを知った。
カリフォルニア工科大学(カルテク)はリチャード・ファインマンが1950年代以降教授を務めたところだった。すごい数の講演者だ。
Long Now 財団の共同議長であるダニエル・ヒリス(W. Daniel Hillis)が晩年のファインマンを回顧する講演をしている。ヒリスというと山形浩生が彼の本を薦めていたので読もうと思いながらまだ読んでないんだよな…
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ヒリスは、コネクションマシンを実現するために創業したシンキングマシンズにファインマンもアドバイザとして関わったときのことを語っている。
このあたりについてはヒリスの Richard Feynman and The Connection Machine というエッセイに詳しい。読んでみると、ファインマンの衰えない好奇心、ユーモア、頑固さ、そして解釈者、説明者としての彼の美点が記されている。原文は CC ライセンスで公開されているので訳したい欲がメラメラと湧いてきたのだが、調べてみるとこの文章は既に翻訳されて書籍に収録されていたので断念。
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このシンキングマシンズには二人の他にもいろんな重要人物が関わっていて、件のエッセイにも名前が出るスティーブン・ウルフラムをはじめ、ガイ・スティールやブリュースター・ケールもいたのね。
今回(既訳を確認するために)図書館で『さようならファインマンさん』を読んだのだが、ヒリスのエッセイの最後、ファインマンの死のおよそ一年前に彼とパサディナの丘を散歩したときの会話を読んでうるっときたので以下引用する。
私は口ごもった。「先生が死んでゆくとはさびしいことです。」
「確かに…」と彼は嘆息した。「僕だってときどきいやになるよ。でも、君が考えるほどではないけどね。」それから二、三歩進んでこういった。「僕の歳になれば、君も自分のもっている知識をなんらかの形でほかの人々に話してしまったという気になるんじゃないかね。」
われわれ二人はしばらく無言のまま歩き続けた。すると、別のけもの道が交差しているところに出た。ファインマンは立ち止まってあたりを見まわした。突然、彼はにやっとして、こういった。彼の顔からは悲しみの陰は消え去っていた。「うちに帰るもっといい道を見つけたよ。」